オトコはツライよ #17

「お土産です」
「ぷ、…リン?」
そんな遠くに行った訳じゃないから、別に名産なんて物は無く。
昨夜のプリンを思い出して、無意識にそれを選んだ。
「流石に立て続けだと嫌ですか…」
「いやいや、全然!寧ろ嬉しい…し」
課長はてっきり、僕が息子の為に買ったんだと思ったらしく。
それが自分の為に選んだと分かるなり顔を綻ばせて喜んだ。
…大袈裟だな。
「また何かあったらいつでも頼んでいいから、遠慮すんな」
「……はい」
「何だよ。その顔」
「いえ…別に…」
「ボクじゃ心配か?頼りないって?」
「や、そんなんじゃ」
「じゃあ、何だよ。あ、昨日はちょっとだけ寂しくなって泣いたんだって。でも直ぐに寝てくれたんだぞ?」
「そうですか…それは有難う御座いました」
「…で?何が不満なわけ」
「いや…別に…」
不満とか、別にそれは無い。
無いけど…
あんな寂しそうな声を毎回聞かされると思うと。
ちょっと、な、と思う僕がいる。
お陰で今朝は目覚めも早かった。
気が気でなくて予定よりも早めにホテルを出て。
駅の構内で目に入ったプリンを気付いたら注文していた。
自宅に着くなり息子の歓迎を受けてホッとした気持ちよりも。
大袈裟だと感じながらも、プリンに顔を綻ばせた課長の反応の方が……
僕の心を占めていた、なんて。
口が裂けても言いたくは。
無かった。
「御礼に今夜は僕が御馳走しますから、何かリクエストとか…」
気まずさから、話を夕食の件にすり替えたのに。
僕の発言に食い気味に返って来た課長の答えは。
「今夜は予定があるんだ。御礼はこのプリンでいいよ」
だった。
その夜、僕は何だか背中の温もりが恋しくて。
ダラダラと飲み続けてしまった。
「…変な癖、つけんなよ…」
でも、結局。
玄関のドアをノックする音は聞こえて来なかったんだ。
……待ってないけどさ、、別に……
予約を落としましたค(TㅅT)คすみません……

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