2016_06
22
(Wed)00:00

オトコはツライよ #16








流石に、前からのハグは僕には辛かった。




「良くないですよ…ぜんっぜん…」



「えー」
「えー、じゃないですって…早く離して下さい」
「わかった…ごめん」



ベリッと課長の身体を剥がしても、何だか身体が熱い気がする。

酔ったか…?



「シム君…なんかふわふわして来た…先に寝るね」
「あぁ、はい。布団はもう敷いてありますから」
「うん…有難う」



課長に息子を預ける為に、少しでも課長のいる生活に息子を慣らしたいと考え。

だから、出来る限り出張までの平日は課長にこの家に居て貰う事にした。

息子を挟んで川の字に布団を敷いた寝室へと向かう課長を見送る。

でもふと、課長は僕に振り向くなり。

腕を伸ばして。




「耳、真っ赤」



ヨシヨシと、火照った耳を指先で摩る。





や…め…ろ…………



でも。

心の叫びは声には出せなかった。





「…おやすみ」




ふっ。と、笑った課長はやっぱり菩薩なのに。


それに反して僕の心はまがまがしい気がぷすぷすと燻り…



その場にへたりと力尽きた。



だけど、既に課長は布団の中。




も、なんなんだ…


訳も分からない疲労がずしりとの伸し掛った夜だった。









あれ程心配していた出張初日が訪れると、頻繁に僕のスマホが震える。

一番最初に届いたのは、保育園の前で息子と課長のツーショット写メ。

恐らくこれは保育園の先生にでも撮ってもらったに違いない。

この時点では二人共満面の笑みを散りばめている。


僕は懇親会が始まって数分が経った頃だった為に、それを確認してまたポケットにスマホを仕舞った。



次に写メが届いたのは、そこから1時間後の事。

プリンを頬張る息子と、半分見切れた課長。

自撮りか?


出張に出かける間際まで夕飯の支度を僕がやっていた為に。

課長はそれを温め直して息子に食べさせればいいだけだった。


プリン、という事は課長が食べたくてコンビニにでも寄ったのかな。


【御飯はちゃんと食べましたか?】

テーブルの下で短くメッセージを送る。



即既読されて、数分してから。


【完食!】

僕よりも更に短い答えに噴き出した。




そしてその次は風呂上がりの写メ。

ホカホカの息子と逆上せ気味な課長。

これはお風呂場で遊び過ぎた所為か?



僕は二次会に誘われて少し気分が高揚していた。





最後は息子の寝顔。

課長は写っていない。



【泣いたんですか?】


トイレに行くついでにメッセージを送る。

数分後に帰って来た一文は。





【ごめん】






息子は泣き腫らした後みたいな顔をしていたんだ。



僕はトイレを済ませても席には戻らずに、店の外に出て。

スマホをタップした。






『お疲れ様です』
『…ごめんな、心配掛けたくなかったんだけど…』
『いえいえ、大丈夫ですよ。凄く助かりましたから』
『そっか…』
『えぇ、あの…』
『ん?』
『有難う御座いました。課長のお陰で久々に外で飲みましたよ』
『………うん、良かったな』
『はい…』
『まだ飲んでるんだろ?』
『あ、はい』
『今夜はゆっくり飲めよ』
『…はい』
『じゃあ、おやすみ』
『…はい、おやすみなさい』




課長との通話を終えてから、店内に戻っても。

さっきまでの高揚感は無かった。




少し寂しげな声色がまだ耳に残って離れない。



…寂しい?まさかな。



単に疲れただけだろ。



そうは思うのに…




心の何処かでは。


甘えさせてやりたい…






そんな風に考えた、僕がいた。













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