止まない雨の癒し 5 -秋雨-
あの夕立の…
キスをした日から…
彼はボクに触れなくなった
あの後、ボクが何も言えずに居たから…
あの後も何度か写真を撮りには出掛けたんだ
秋色に染まってゆく風景を
慈しむようにカメラに収める彼
その横顔を盗み見るだけで
胸の奥がきゅうって…
何なんだろう…
一体どうしちゃったの…ボクの心臓
---------------------------------------------------
あれ以来…
彼に触れていない…
あの時はつい…
そう、僕の想いで彼を抱き締めたんだ
そしてその想いのままに…
キスを…
彼はそれを受け入れただけ
優しい彼を困らせてしまったんだね
だから…もう…ね…
---------------------------------------------------
今日は仕事が休みで久しぶりに
彼のお店に足を向けていた
外は秋も深まり
長雨の季節になっていて
出会った頃に降っていた雨よりも
少し冷たさを感じたんだ
そして
ボクの心も…
少しだけ寂しさを感じているのは
これから彼にある事を
伝えに行くからなのかな…
---------------------------------------------------
彼が久しぶりにお店に訪れた
会えて…
嬉しいようなでも…少し
…切ないような
そして
彼はあのはにかんだような笑顔で
"仕事を辞めて、夢を追えるようになりました"
そう、僕に伝えたんだ…
彼はプロダンサーの夢を持っていた
けれどそれだけでは食べていけない
だから昼間は外で汗を流して働き
夜はダンスの練習に励んでいたんだ
その事は前に彼から聞いていたけれど…
"海外公演のダンサーとしてオーディションに合格したんです"
"だから…暫く、会えなくなります"
僕は何て返事をしたのか覚えていない
けれど今は…
ソファで眠る彼の横顔を見つめている…
もう…暫く…
会えないの…?
震える手を伸ばして
彼の頬の傷に
そっと触れた
想いを伝えられぬまま…
また貴方に触れてしまう
僕を
許して…
---------------------------------------------------
彼に会えなくなる…
けれど、夢を応援していてくれたんだ
だからちゃんと伝えなきゃいけないと思ったんだ
"おめでとうございます…"
喜んでくれた彼の笑顔が
少しだけ
哀しそうに見えたのは
ボクの気の所為…かな
そしてボクは
仕事と練習の疲れと
それと彼に伝えると言う緊張感を
ココアの香りで解放されて
また夢の世界へ入り込んでしまっていたんだ
ふわりと触れるあの温もり…
うっすらと瞼を開けて目に飛び込む
彼の寂しそうな顔
だから
ボクは思わず
その手を引き寄せていた
そして
唇が触れた…
トク…ン…
あぁ…やっと気付いた…
"好きなんです…"
---------------------------------------------------
触れた唇から
溢れた彼の言葉…
言えなかった僕の想いがそこにあった
"僕も…です"
胸が詰まって
それだけ言うのが精一杯だった
僕を優しく見つめる向日葵の笑顔が
くしゃくしゃに歪んだ
そして…
---------------------------------------------------
今にも泣き出しそうな彼が愛おしくて
また胸がきゅうっとなった
泣かせたくないんだ…
彼の両頬を掌に包んで
もう一度
その唇に
口付けを落とした…
トクトクトクトク…
彼を包む掌と重なる唇
触れ合う全てに心臓が鼓動を立てて
外にしとしと降る雨音と
静かに溶け合っていた
そのリズムを聞きながら
ボク達はいつまでも
お互いの熱を感じていた
好きな人とのキスはとてもふわふわして
離れたくなかったんだ…
See you again

キスをした日から…
彼はボクに触れなくなった
あの後、ボクが何も言えずに居たから…
あの後も何度か写真を撮りには出掛けたんだ
秋色に染まってゆく風景を
慈しむようにカメラに収める彼
その横顔を盗み見るだけで
胸の奥がきゅうって…
何なんだろう…
一体どうしちゃったの…ボクの心臓
---------------------------------------------------
あれ以来…
彼に触れていない…
あの時はつい…
そう、僕の想いで彼を抱き締めたんだ
そしてその想いのままに…
キスを…
彼はそれを受け入れただけ
優しい彼を困らせてしまったんだね
だから…もう…ね…
---------------------------------------------------
今日は仕事が休みで久しぶりに
彼のお店に足を向けていた
外は秋も深まり
長雨の季節になっていて
出会った頃に降っていた雨よりも
少し冷たさを感じたんだ
そして
ボクの心も…
少しだけ寂しさを感じているのは
これから彼にある事を
伝えに行くからなのかな…
---------------------------------------------------
彼が久しぶりにお店に訪れた
会えて…
嬉しいようなでも…少し
…切ないような
そして
彼はあのはにかんだような笑顔で
"仕事を辞めて、夢を追えるようになりました"
そう、僕に伝えたんだ…
彼はプロダンサーの夢を持っていた
けれどそれだけでは食べていけない
だから昼間は外で汗を流して働き
夜はダンスの練習に励んでいたんだ
その事は前に彼から聞いていたけれど…
"海外公演のダンサーとしてオーディションに合格したんです"
"だから…暫く、会えなくなります"
僕は何て返事をしたのか覚えていない
けれど今は…
ソファで眠る彼の横顔を見つめている…
もう…暫く…
会えないの…?
震える手を伸ばして
彼の頬の傷に
そっと触れた
想いを伝えられぬまま…
また貴方に触れてしまう
僕を
許して…
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彼に会えなくなる…
けれど、夢を応援していてくれたんだ
だからちゃんと伝えなきゃいけないと思ったんだ
"おめでとうございます…"
喜んでくれた彼の笑顔が
少しだけ
哀しそうに見えたのは
ボクの気の所為…かな
そしてボクは
仕事と練習の疲れと
それと彼に伝えると言う緊張感を
ココアの香りで解放されて
また夢の世界へ入り込んでしまっていたんだ
ふわりと触れるあの温もり…
うっすらと瞼を開けて目に飛び込む
彼の寂しそうな顔
だから
ボクは思わず
その手を引き寄せていた
そして
唇が触れた…
トク…ン…
あぁ…やっと気付いた…
"好きなんです…"
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触れた唇から
溢れた彼の言葉…
言えなかった僕の想いがそこにあった
"僕も…です"
胸が詰まって
それだけ言うのが精一杯だった
僕を優しく見つめる向日葵の笑顔が
くしゃくしゃに歪んだ
そして…
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今にも泣き出しそうな彼が愛おしくて
また胸がきゅうっとなった
泣かせたくないんだ…
彼の両頬を掌に包んで
もう一度
その唇に
口付けを落とした…
トクトクトクトク…
彼を包む掌と重なる唇
触れ合う全てに心臓が鼓動を立てて
外にしとしと降る雨音と
静かに溶け合っていた
そのリズムを聞きながら
ボク達はいつまでも
お互いの熱を感じていた
好きな人とのキスはとてもふわふわして
離れたくなかったんだ…
See you again

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