オトコはツライよ #13

その朝の課長は、若干罰が悪そうに自宅へと戻って行った。
アルコールが抜けて、冷静に昨夜の事を思い出したんだろう。
自分の行動を流石に失態だと感じたか…?
「泊まっちゃってごめん…」
始業前に課長が。
デスクに身体を寄せてボソッと呟いた。
……そこ、かよ。
バッグハグじゃねぇのかよ。
相変わらず、『チョン・ユンホ定義』が理解出来ない。
そんな訳で。
感覚がズレ気味な課長を。
甘えさせてしまったあの夜から。
「シム君、今日もお疲れ様でした」
「はぁ、、」
「じゃ次はボクね」
「はぁ…」
息子を寝かし付けた後に、これが恒例化してしまっている。
ヨシヨシと、バッグハグ。
まるで2つで1セットみたいな感じにされて、僕が拒否ると課長が甘えられない様な流れになっているし。
僕もピタリと身体をくっ付かれる時こそ一瞬背筋が震えるんだけど。
その内、テレビに集中すればあまり後ろの存在が気にならなくなる。
慣れって、怖いな。
しかも。
ずしっと背中が急に重たくなるのを合図に。
そのまま背負って布団に入れる回数も増えた。
その内、家に居着くのも時間の問題じゃないんだろうか?
息子は。
課長がいる日の朝は機嫌がすこぶる良い気がする。
そして、日に日に息子は課長に似て来た。
父親が二人居る感覚だと思っているのかもしれない。
僕も。
それでいいと思えていた。

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