Mother ~Sequel~
「もーっ、、面倒臭いっ!」
堪らずダイニングテーブルに突っ伏した所で声を上げたら。
向かいでカチカチとマウスを弄っていたパパがディスプレイから視線を外して私をチラッと見て。
「パパが代筆してあげようか?」
って。
「ん、無理」
って即答したら、ははっと笑って。
「だよね」だって。
んもうっ。
パパに頼んだら先生にバレるじゃないの!!
あぁ、、もうっ、、。
何で世の中にこんな宿題が存在するんだろう。
【私・僕の家族について】
レポート用紙何枚でもいいです。
…って、私の家族構成を文章にしてちゃんと説明するには何枚書いたらいいのぉ!?
えっと、私の家は…パパと、そして本当はパパだけどママ役のママと私の三人家族です…
って、、、おかしいでしょう!!
やーん、、、もう本当に面倒臭いーっ。
仲の良い友達とかは知ってるし。
勿論、担任の先生だって知ってるんだからわざわざクラスのみんなに知らせる必要なんてある??
あぁーん、、、もうっ、、やだぁ~~レポートなんて書きたくない~~~、、
結局、その私のぐずぐずは帰宅したママの耳にも入り。
夕ご飯の後にダイニングテーブルで家族会議が始まった。
ママはありのままに書いたら?って簡単に言ってくれちゃうんだけど。
何ていうかなぁ…私が悩んでるのはそこじゃないのよね。
すると、ママの隣でマグカップに口を付けていたパパがボソッと。
「どこまで本当の事を書いていいのか迷ってるんだろ?」
って…
んー、当たり。
そうなのよ。
どこまでパパとママの事を書いたらみんなにちゃんと伝わるのかな。
ちゃんと誤解なくうちの家族の事を分かってもらえるのかなって。
パパとママがどんなに愛し合って。
私が生まれたのかって。
それをレポート用紙にどんな風に詰め込んだらいいのか。
私はそれが自分でちゃんと書けるのか、不安なんだもん…
私の家のリビングの片隅には大きなアクリルケースが置いてあって。
そこはいつも陽が差し込まないから暗い場所なんだけど。
そのケースの中に飾られてある物が華やか過ぎて。
来客はみんな引き寄せられる様にその場所へ足を向けてしまうの。
だって…108本の薔薇のプリザーブドフラワーなんて圧巻でしょう?
私は。
その花束を見て育ったの。
ちゃんとその数の意味を教えてもらった時の。
あの、感動を…
私は多分、この先の恋愛で更に深く思い出すんじゃないかな…
小さい頃から周りのお友達から『ジユルちゃんのお家は変だよ』ってはよく言われていて。
パパとママにその事を言ったら。
パパは何だか変な顔をしてたけど、ママはにっこりと笑って。
『ちょっと変わってるけど、ジユルが変だと思わなければ変じゃないよね』って言ったの。
それからは周りに何を言われようが、私はママの言った事を思い出してにこにこ笑って返す事にしていて。
そうなると周りの方が何も言わなくなるのよね。
でも、成長するにつれて心も身体も育っていくと色んな疑問が沸き起こる時期に差し当り。
小学生の高学年で初経を迎えた私に対して、ママはキチンと話をしようかって初めての家族会議を開いたの。
ママはパパの手を握って。
多分、ちょっと震えてたのかな。
パパもママの手を握り返して。
私はそんな二人の前でドキドキしながら話を聞いた。
ママは小さい頃からお花屋さんになりたくて、その夢を叶える為に専門的な学校に行ったりしてたんだけど。
その途中で子供を作れない病気になった事を知ってしまい。
お花と同様に、子供が好きだったママはあまりのショックに学校に通い続ける事が出来なくなって。
一時期は死のうかって考えたって。
それを聞いた時、私はぎゅってお腹が痛くなった。
でも、学校を途中で辞めてしまった後。
気分は落ち込んで最悪だったけれど、働かなければ生活出来ないって事でアルバイトを始めて。
そこでもやっぱりお花に関わる仕事がしたくて。
アレンジメント講師のスタッフになったママは、一人の女性と出逢ったの。
それが。
パパのお母さん。
つまりは私のおばあちゃんだったんだって。
ママはその出逢いこそ、運命的だった、って言ってた。
でも。
その隣で話を黙って聞いていたパパは複雑な顔をしていたから。
私がパパに『パパと繋がる出逢いだったから運命的って事よ』って補足したらやっとホッとしてたっけ。
うちはウェブデザイナーをしているパパの方が稼いではいるんだけど、何だか少し性格がぼんやりしていて。
お花を取り扱ってるママの方が一見ふわふわしたイメージとは裏腹に大胆だったり、ロマンチストだったりするの。
本当の血筋でいったらママとは繋がりの無い私だけど。
どっちかと言うとママとの方が気が合うと思っているのは…パパには絶対に言えないわね。
そしてその時、ママは私にこう言ったの。
『僕は心も身体も男なんだ。でもね、好きになった人がパパだったからどうしてもその人の子供が欲しくなっちゃって。だからこうしてジユルがいるんだよ』
って、
ママは自分の遺伝子を残せなくても。
それでもパパを愛していたから、私がいるのよね。
あの時の私はその意味を半分理解して。
半分はそうなの?と思いながら聞いていたけれど。
今なら少しだけ分かるもの、ママの気持ちが。
だって、私も恋をしているから…
まさか高校生になってまでこんな宿題をやらせられるとは思ってもみなかったけど。
家族会議と言う名のただのお茶飲み会で三人であーだ、こーだと言い合ってるうちに。
小学生の時のよりは私なりに何とか書ける気がして来て。
その後、何とか一人で頑張ったの。
そして、やっと書き上げた頃にはパパはもう寝室で先に寝ちゃったらしく。
ママだけがリビングでテレビを観ていたから傍に寄って。
後ろからぎゅっと抱き着くとママはびっくりして、でも直ぐに。
「何か話したい事でもあるの?」
って…ママは勘が鋭い。
「うん…今ね、付き合ってる彼氏がいるんたけど。その、ね…キス以上の事をしたいみたいなの…」
あぁ、言っちゃった。
パパには内緒だけど、ママなら話してもいい気がしたから…でも恥ずかしい、、、!
「ふーん。彼はエッチしたいって言ってるんだ」
「ママッ///!!」
相変わらずストレート過ぎるっ、、、
「そりゃしたいよね。そう言う時期だから彼女がいるならそんな気持ちは自然の事だよ。それにこんな可愛い彼女なら尚更!」
「う、うん…」
「で・も!その彼が避妊をちゃんとしてくれない人だったら即お別れだね」
「えぇっ///!?」
「したらいいよ。それも経験だし、ジユルの青春の一ページになるんだし」
「ママぁ~~そんな簡単に言わないでよぉ…」
「え?何で??あっ!胸に自信無いとか?どれどれ、ママに見せてご覧~」
「ぎゃっ、、ちょっとママッ!!どこ触ってんのよ///」
「ふふ、胸だと思わしき筋肉」
「筋肉!?失礼ねっっ胸は脂肪なのに!!」
「アハハッ」
「もう、、ママったら。…でも、ありがとう、彼とちゃんと話してみる」
「うん、そうしなよ。分かってくれる人ならパパも大丈夫だって」
「え?何が??」
「ん?結婚も許してくれるんじゃないかな」
「はぁ!?ママ、、気が早過ぎよっ///」
「あは、そうかな。でもいつか…なんだよね」
「うーん、そりゃいつかはお嫁に行かなきゃだしねぇ」
「パパ、泣くね」
「うふふ、絶対泣くね。ね…ママは?ママも寂しい…?」
「…………寂しすぎて着いて行っちゃうかも…」
「、、、ママ……ぶっは!もーーーーそんな事したらパパもくっ付いてくるじゃない~~!」
「あはっ。だね~」
「あ、もうこんな時間!寝なきゃ。ママおやすみ」
「うん、おやすみ。いい夢見てね」
「うん。あ、ママ……ねぇ、パパと結婚して良かった?」
「愚問!」
「はいはい、ご馳走様でした」
ねぇ、ママ?
私の夢はね、あっ、夢って夜の夢じゃなくて将来の夢の事よ。
パパとママに負けない位の素敵でカッコいい旦那様を見つけて。
そして。
その人との間に可愛い子供を産んで。
そしてね。
ママみたいな、"母親"になりたいの…
なれるかな?
ちゃんと見守っていてね、いつまでも…
高校生で初めて付き合った彼と。
今、私が選んだ彼は別の人になっちゃったけど。
ママに言われた通りにどの人にもちゃんと自分の気持ちを伝えながら。
その中でも私の事も、そして私の家族の事も。
一番理解してくれた彼と結婚する事を決めたのよ?
ね、だからそんなに泣かないで、ママ。
パパの方が泣くって言ってたのは誰よ、ねぇ…
なのに…
"生まれてきてくれて有難う"
だなんて、、、
私まで、、泣いちゃうじゃない、、
私だって。
ママがママで…良かったもん……
有難う、ママ。
「っ、、もうっ大好き!」
ーーーーー私のヴァージンロードは
我儘を言って、右にパパ、左にママ。
だって…
ずっとこうして歩いて来たんだもん。
結局、一番泣いちゃうのは
私、みたいね…
end

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