2016_02
05
(Fri)00:00

迷い猫 #5






朝、目が覚めてみると腕の中には愛らしく猫が丸まって…いる筈もなく。

肩こそ触れ合うものの、狭いベッドの大半を占めながら奴は隣で寝息を立てていた。


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海風が爽やかに抜けるとはいえ、まだ夏なんだ。朝だってそこそこ暑い。
パンイチでぎゅうぎゅうのベッドの中で二度寝する気にもなれずに、俺はそそくさと寝室を後にした。

温めのシャワーを頭から浴びながら、昨日の事を考える。
俺とあいつは寝たんだ。しかも互いに素面な上に、同意のもとで…
だからと言って俺の中で何かが大きく変わるような変化は見受けられない。
いや、下半身がやたらとスッキリしているのは別として。

気持ちが、こうなんて言うか…

男に対して愛情が湧くとか、そんなのは無さそうだし。
兎に角、自分がホモでは無いことを再度確認をして、汗を流し終えてから風呂場を出た。

「あ、おはよ」

変な寝癖を付けたまま。
上は辛うじてTシャツを着てはいるが、下半身はボクサーパンツだけの姿で奴が振り返る。

台所に立ってトントンと包丁を握っていたシチュエーションが悪いんだ。

「なに突っ立ってんの?」

決して、そのスラリと伸びた脚に見惚れていた訳じゃない。

「あ…いや、おはよ…」

前言撤回?いやいや、俺はホモじゃねぇ。



食卓に湯気の上がった白飯とおかずとスープ、それを挟んで奴と向かい合って座る。
朝から出来たての食事なんて本当にいつ振りだろう。
いつもレンジで温め直したアルムさんの惣菜で済ませてたのに。

理想的な朝を迎えて、ぼんやりとご飯を口に運びながら。

「これも、昨夜のも恩義か?」

何となくそれを聞くタイミングじゃないとは思いつつも言ってしまい、慌てて奴の顔を見ると。

「さあね」

不貞腐れ気味でそう答え、そして更に付け加えるように。

「だからって、朝から盛んなよっ!?」

と、在ろう事か胡座を掻いて無防備の俺の股間を足で蹴りやがったんだ。

「、い゛、、っ、、、」

「さっき半勃ちだっただろ」

ギロッと睨むあいつ。

・・・バレてたか。

でも俺はホモじゃねぇ…多分。




この制服に身を包むと、やはりこれが本来の自分の姿である気がしてホッとする。

よし、今日も平和な一日でありますように。
パンッと軽く頬を叩いて気を引き締める。

出掛け際にゴロゴロと寛いでいたあいつに声を掛けた。

「お前の今日の予定は?」

すると、少し考えてから奴は。

「マーキングしてくる」って真顔で返すから。

「はぁ…」

しか言えず。

「だって猫の仕事ってそれだろ?」って、ニッと笑って言うんだぜ。

参るよな、何だよそれ。
こいつとはまともに話してらんないね。

「ハイハイ、りょーかい。気を付けてな」

そう言って家を出た。





俺がこの島の人達の好きなのが、噂に執着をしない所だった。

昨日散々囃し立てた漁師達ももう別の話題で盛り上がっているし。
ブミさんもその事については触れて来ないし。

噂の出元である子供達さえも。

「ユノ~、チャンミニヒョンはぁ?」

「んー?マーキングに出掛けてんじゃね?」

「へ?マーキング!?」

「そっ。だってあいつ、猫なんだろ?」

「そっか」

こんな風に会話して、キシシッと笑ってみせるだけだった。

確かにユノの心にはさざ波が立ち始めていた筈なのに。
その波に身を任せてもいいかもと、何処かそう思っていたのかもしれない。




「あれ?…なんだ、居ないのかよ」

岬で釣りをしていたおっちゃんに声を掛けたら、気前良く魚を一匹貰ったもんで。
それを早速あいつに見せようと、昼の休憩時間を使って家に戻ってみたってのに。
あいつの姿は何処にも見当たらず、仕方なくその魚を下ろして貰おうと二軒隣を尋ねる事にした。

…マーキングって何処まで行ってんだよ…

でもその答えは直ぐに分かってしまったんだ。

「こんにちは~アルムさん居ますか~?」

「はーい」と店の奥から声がして何だかソワソワした気持ちになっていたら、いつも俺が座るカウンターの向こう側に人影が見えて。

お?誰か手伝いに来てんのかなぁ…ぐらいに思って少し体をずらして覗き込んだら。

「よぉ」

って…、あいつがそこに居たんだ‼︎しかも腕まくりしてエプロンとか付けちゃって、、、
まるで…まるで、、、

「うちの新しい職人さんよ」

いつの間にか俺の横に立っていたアルムさんがにっこりと美しい笑みを添えてそう言ったんだ。

「マジか…」

「うふふ。そう、マジよ。凄く飲み込みも早いし、仕事も丁寧だし、素質があるのよチャンミン君」

褒められた本人ははにかんで照れた様子を隠していたけれど、俺の腹は何だかモヤモヤと燻り。

「あら…ユノちゃん?え、このお魚くれるのかしら??えっ…ちょっと、、」

活きのいい魚は戸惑うアルムさんの腕の中でピチピチと跳ねた。

そしてそのまま、また巡回へと戻ったんだ。







死ぬ、、

流石に昼飯抜きで島を回るには限界があった。島の人から出された茶菓子で腹が満たされる事もなく、結局いつもより早く巡回を切り上げてしまった。

そして交番よりも二軒手前で足がピタリと止まる。

預けた魚?いやあげた魚をどうしたのかも気になるし、腹もこの通り減って死にそうだし…

色んな言い訳を思い浮かべて引き戸を開ける手を彷徨わせた。

すると

「こんなとこで突っ立って何やってんだ?ささっと入っちまえよ」

後から来た客に押されるように店内に足を踏み入れてしまう。

「いらっしゃいユノちゃん」

相変わらず凛とした美しさで人を惹き付けるアルムさんがそこには居て…その奥では

「いらっしゃいませ」

ボソボソと挨拶をする奴が俺の目には映り込んだんだ。

「どうも…」

変な感じだ、そう思った。



いつのもカウンターでちびちびと焼酎を舐めながら、昼間に持ち込んだ魚のフライを箸で突っつく。

時折、チラッと奴の様子を伺うとさっきまで忙しなく動かしていた包丁を握る手は徐々に止まりだし。
客が引けて、今度は洗い物へと移るようだった。

その合間を見て声を掛けようか逡巡していた俺の横から同じようにカウンターに腰掛けていた他の客が先に声を掛けてしまう。

あいつは声を掛けられればそれに答え、特段面白いとは思えない話でもそれなりに応対してみせた。

・・・ふんっ。

「ふふっ、今日のユノちゃんは変ね」

隣に腰を下ろしてくれたアルムさんからお酌をされて、いつもなら跳ね上がる心臓も今日はピクリともしない。

そうか、今日の俺は変なんだ。

「…アルムさん、あいつの上りって何時?」

「あっ、そうね。そろそろ上がってもらおうかしら」

変だから。
そう、今日の俺はいつもと何かが違うんだろうな。
アルムさんが奴に声を掛けるよりも早く、俺は立ち上がって。

「おいっ」

カウンターの向こう側に立つあいつに向かって。

「帰るぞ、…チャンミン」

初めてその名前を呼んでいたんだ。



一刻も早く、連れて帰りたいってそう思う俺は。

変だった。







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2016/02/05 (Fri) 08:22 | # | | 編集 | 返信

あらあら!ユノさんに変化が( ✧Д✧) カッ!!

あゆさん 皆さんおはようございます。
あゆさん 昨日は薬が効いて朝まで
ぐっすり眠れて良かったですね♡(๑¯ ³¯๑)
風邪は寝るのが1番(๑•̀ㅂ•́)و✧

何だか ユノさんに変化が見られるよ( ✧Д✧) カッ!!( ✧Д✧) カッ!!( ✧Д✧) カッ!!

俺はホモじゃあない!!!って
何回も言ってるけど
朝からボクサーパンツのチャンミンの
足みて半勃ちするは 貰った🐟を
1番にチャンミンに見せに行こうとするは
チャンミンが働いてる時に
お客さんと話してる姿をみたら
早く🏠に連れて帰ろうとしたがるし❀.(*´▽`*)❀.
あらあら (//∀//)
くみをの目は誤魔化せないならねっ( ✧Д✧) カッ!!
チャンミンに1番マーキングされてるのって
ユノだよね( ̄∀ ̄;)

あゆさん 昨日部長のしねえ福岡婚
あれからすぐ見ましたわ( ✧Д✧) カッ!!
F4ならぬS4にうけました( ・ิ౪・ิ)
あっ まだあゆさんもゆんちゃすみさんも
見てないからお口チェックしとくね♡(๑¯ ³¯๑)
言いたくてムズムズするけど( ・ิ౪・ิ)

2016/02/05 (Fri) 11:06 | くみちゃん #- | URL | 編集 | 返信

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2016/02/05 (Fri) 11:26 | # | | 編集 | 返信

じゅ***様

じゅ***さんこんにちは( *´艸`)コメント有難う御座います♡

あはーっ!そうですよ、これBLですからヾ(≧з≦)ゞブッ
でも言いたい事は何となく伝わりました(笑)
有難う御座います(*˘︶˘*).。.:*♡

へぇ〜ノーマルでユノが島民なんて、それだけで素敵!って思えるお話ですね(#゚ロ゚#)
私も島民で漁師のユノさんのお話からインスピレーションを頂いてるんですよ♪♪
やっぱり島民が似合うんですね(笑)

あ!あの方が作られてるんですね\(//∇//)\
素敵な画像ですよね♡
追伸。
後ほど、ご相談があるのでお邪魔します。
多分、アメブロのメッセージにて……

2016/02/05 (Fri) 13:31 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

くみちゃん様

くみちゃんさんこんにちは( *´艸`)コメント有難う御座います♡

薬の効きが良すぎて、朝飲んだ薬の所為で午前中も眠かったんです!!昼も眠気が(笑)

あははははは!本当だっ!!チャンミンにマーキングされてるのってユノさんですね(〃゚艸゚)
オンニ上手い〜♡♡♡凄い〜〜〜♪♪

やだぁ〜いつの間にかオンニも気になってるんじゃないですか(笑)おっ!?
S4(笑)!?早く観たい!!!

セルカを撮ってたユノコを見てから、一気にユノコが愛おしくなってしまい。
バースデーケーキも食べさせるし、服も買ってあげようと思ってせっせと貯めてます(笑)
愛って不思議なものです(笑)

2016/02/05 (Fri) 13:36 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

na***様

na***さんこんにちは( *´艸`)コメント有難う御座います♡

ね(笑)明らかに嫉妬ですよね…\(//∇//)\
ホモじゃん。どう見てもホモだし(笑)

さ、連れて帰ってやる事は1つ!!!

2016/02/05 (Fri) 13:38 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/02/05 (Fri) 21:39 | # | | 編集 | 返信

ひま***様

ひまさんおはようございます( *´艸`)コメント有難う御座います♡

ふぁ〜〜///ひまさんのイメージ通りの島なんです\(//∇//)\
そうそう、そんな穏やかな日常に他所者の二人が馴染んでいる様子に癒されますよね💓
島でも、割と温暖な方ののどかな地域を想像してますから♪

ち、、、ちびユノ君(°0°)‼なーーーんと!可愛い!可愛い!!
私もそこに入りたかったです\(//∇//)\
ぎゅむむむっ。って出来るのはしぇんしぇの特権(*´д`*)ハァハァ
やっぱり二人の子供なんですね(笑)
え!?お迎えはブミさんが(笑)!?
って事はおばあちゃんのお迎えなんですか?
ふふ、なんか可愛くて面白いお話でした♪♪

2016/02/06 (Sat) 09:03 | あゆ #- | URL | 編集 | 返信

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