イクメンウォーズ #17

「いただきまーす♪」
料理が冷めない内にって、早速僕等は目の前のご馳走を頬張る事にした。
メインのシチューには隠し味としてコンデンスミルクを加えてある。
これで市販のルウでも、更にミルキーさが出てコクが深くなるんだ。
因みにこのコンデンスミルクは苺好きな園長がこっそりとカゴに入れていたのを知っていたから、少しだけ拝借したんだよね。
ふふ、でもその違いはこの親子には気付かないかな…
「おいひぃ~~!!!ね、パパ!」
でもこうやってバクバクと掻き込んで喜んでくれる姿だけでもう満足なんだけどね。
「あ、ミヌ君。お口の周りがダラダラですよ」
近くにあったハンドタオルで口の周りを拭いてあげていると。
バチッと園長と目が合い。
ん、って。
それってさぁ…
「パパもお口に白いお髭付けてる~~!」
ほら、キャハハとミヌ君に指をさされて笑われているのに。
「おい」
また、ん、って…
もうっ…
ティッシュを手にそのお髭に触れる。
すると
またペロッ…て。
もうっ、、、何なんだっ///
今日の園長はやっぱりおかしい…よ
「ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪」
勿論、これは絶対に欠かせないよね。
本当はサプライズしたい所だったけれど当日の注文だとキャラデコは受付出来ないと言われて。
泣く泣く、店頭で並んでいる小さめのホールケーキを選んだ。
そしてせめてこれが誕生日だと、特別なケーキだと。
そう思わせたくて…食料品フロアで購入したカットフルーツをふんだんに使ってデコレーションを追加してみたんだ。
ちっちゃなケーキに山盛りのフルーツ達。
それは、とってもアンバランスなのに。
ミヌ君の目はキラキラと輝いていた。
一旦、部屋の電気を消すと。
ローソクの炎だけがゆらゆらと揺らめいて。
期待に満ちたミヌ君の顔を照らす。
「6歳おめでとう~‼︎」
僕の掛け声を合図にフゥーッとロウソクの火を一気に消した。
また部屋の電気をつけてミヌ君に振り返ると、園長がその頭を優しく撫でていた。
多分、ロウソクを全て消して凄いなとかそんな事を褒めているみたいだったけれど。
その眼差しが穏やかで息子を愛おしむ父親そのものだったんだ。
何だかその光景にきゅっと胸が詰まった。
あぁ…園長もいつか…
家庭を持つ人なんだ、って改めてこんな時に感じるなんてね…
ふぅ、息を整え。
ケーキをカットしてそれぞれのお皿によそう。
お祝いの席でしんみりしている場合じゃない、しっかりしろ僕。
気を取り直し、ケーキにフォークを刺そうとした所で
「明日、プレゼントを買いに行こうな」
僕とミヌ君の顔を交互に見ながら園長がそう言った。
「あ…そうですね。一日遅れちゃうけどちゃんとプレゼント選びに行きましょうね」
そうだった。
エプロンはミヌ君が欲しかった物じゃ無いんだからちゃんと別な物を選ぶ必要があるんだし。
その事をすっかりと忘れていた。
でも、ミヌ君は首をただふるふると横に振るだけ。
もしかして。遠慮、、?してるのかな??
園長をチラリと見るとやはりどうした物かとミヌ君のその様子を見守っていた。
「遠慮ならしなくていいんですよ」
なるべく優しく落ち着いた声でそっと声を掛けると。
ミヌ君はゴソゴソと何かを取り出して。
「プレゼント…もう貰ったもん…」
その手には。
3人で写ったプリクラのシールを持っていて。
「えっ、、だって…そんなのでいいの??」
するとミヌ君はこくんっと頷き。
「パパ、、と…ママ、、と…3人で撮った事、、、、、無いもん…」
そう言って。
ボロボロと大粒の涙を流したんだ…

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