Sirius~星がくれた恋~ #29

「シムか…部長のあいつがもしかしたら部員達にけしかけたのかもしれないな。一度、呼び出して話をしてみるか…」
ヒチョルにとってはユンホを思っての言葉だった。
だから何気なく呟いたのだったが
「ヒョンっ!」
ぐっとユンホはヒチョルの腕を掴んで怒鳴り声を上げ。
普段見せないユンホのその剣幕に。
ヒチョルは驚いた。
目を見張るヒチョルにハッとユンホは我に返り。
「あっ…ごめん、シムの事は自分で確認してみたいんだ」
慌てて取り繕うユンホであったが、ヒチョルは怪訝な顔付きを隠そうとはせず。
「お前、そう言えばやたらとシムの事を気掛かりにしていたよな…まさか」
「部長と顧問だから、気にして当り前だろ」
そう言いながらも視線を合わせようとしないユンホに対し。
「…そうかよ、でもこれ以上最悪な結果だけは避けろよ。お前が傷付くのはこれ以上ごめんだからな」
ヒチョルの心配は募るばかりであった。
「分かった、色々とごめん…ヒョン有難う…」
ユンホもまたヒチョルの想いを本当の意味で受け止め切れずにいる自分と。
そしてその優しさに甘え切ってしまう自分に対して。
葛藤していたのだった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゚・*
デスクマットに並んだ2枚のステッカーを眺め。
ユンホは一つ息を吐き。
そして立ち上がった。
「急に呼び出して悪かったな」
人気のない廊下に立つ人影。
部室の前で立ち尽くすチャンミンの姿だった。
「いえ…用があるなら断れませんから」
「あぁ先ず入って話そう」
ユンホがチャンミンの肩に触れようとすると咄嗟にそれをチャンミンは交わした。
ユンホは空振りした掌を見つめ、そしてぐっと拳にして腕を下ろしたのだった。
「これ、拾ったんだ」
ユンホが差し出したのはあの水瓶座のステッカーであった。
「…何処かで落ちたんですね、すみません」
ユンホの手からそれを受け取ろうと手を伸ばした所で
「何で体育倉庫に居た」
ユンホの手がチャンミンを掴んだ。
「っ、!痛いです、、離して下さいっ…」
「離さない。どうしてお前があそこに来たのか、それを聞くまではこの手を離さないっ!」
チャンミンがその気迫に目線を逸らそうとすると。
ユンホは更にその手に力を込めてチャンミンを見つめ直す。
けれど、チャンミンは何も言い出せずにユンホを見返すばかりだった。
しかし
「…お前、俺が学校を辞めればいいって本当に思ってんのか…?」
ユンホの口から思いも寄らぬ言葉を聞かされ…
そして。
それを口にした途端、自分の手をあれ程強く握っていたユンホから一気に力が抜けるのを感じ。
抱き留めなければ
まるで目の前のユンホまでもが
Siriusとなって見守る母のように
自分の元を去っていく気がしてしまったのだった。
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