ムソク様の憂鬱 #8

ムソクが慌ただしく荷造りを行う間に、王は両班に化ける。
けれど…やはり高貴な血筋。
何処かしら品の良さが漂ってしまうものだとソン内官は感心していた。
「王様…ムソクだけで本当に良いのでしょうか…」
本来ならば堂々と視察に出向くべき場所へ、何故か王は身分を隠して行きたいと申して仕方がなかったのであった。
その様に心底不安の表情を露わにする内官に対して王は。
「ほほぅ、其方はムソクの腕を疑っておると言うのか?ならば今直ぐにでも内禁衛将に申し付けてムソクを任から解くとするか」
その王の発言に驚いたのはソン内官であった。
まさか、その様な事を王命で下されれば…
内禁衛将が大変な事になってしまうと慌てたのだった。
勿論、王はその内官の胸内も察していてわざと意地の悪い事を言ったのであって。
まさか実際にその様な命を下すつもりなど、更々無いのであった。
ムソクの代わりになる様な腕の立つ剣士は他にはおらぬ。
それが宮中内で皆の共通認識であったからだった。
「…お前は相変わらず意地が悪いな」
王宮外では不審に思われぬ様に並んで歩く二人。
「なんだ聞いてたんだ」
「あぁ、あんなに馬鹿でかい声で話していたのに内緒話か?わざと聞こえるようにしていたとしか思えないな」
「ふふ、やっぱりムンさんにはばれていたんだね」
「はぁ…わざとか…しかし何故そんな事を…?」
「ムンさんを特別視しているって宮中内では専らの噂だって知らない?」
「……」
「ふっ…知らない訳ないよね。だってムンさんは私に近付くのを人一倍警戒しているもんね」
「なら、何故…」
「牽制かな。ムンさんを特別視する意味を再確認させたかったんだ。あの者に」
「だからって……馬鹿な事を」
「馬鹿!?なっにぃ~私とムンさんの仲を嫉妬している護衛に対して牽制ぐらいいいでしょ!?本当は三人体制じゃなくてムンさん一人でもいいって思っているのにっ‼︎」
ぷりぷりと今にもはち切れんばかりの艶のある頰を膨らまして、ムソクに噛み付いた。
そんな王を見てムソクは心底嬉しかった。
けれど、意地の悪いのはムソクも同じ。
「特別視は剣の腕だけか?こっちの関係はあいつに教えてやらなくてよかったのか?」
今にも噛み付きそうな勢いであった王もムソクのその含み笑い越しの言葉に咄嗟に身を竦め。
「…こっち…?」
じりじりとにじり寄るムソクに終いには道の端に追い詰められる。
「あぁ、こっち…」
ぺろりと舌が王の首筋を舐め取った。
少し塩気がぴりりと舌に効き、ムソクはそのまま王の耳元に唇を移動させ。
「明日は長い、今日は早々に疲れを癒そうではないか…なぁ、ユン」
怯む王の腰を抱き、一軒の宿へと入ったのであった。
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けれど…やはり高貴な血筋。
何処かしら品の良さが漂ってしまうものだとソン内官は感心していた。
「王様…ムソクだけで本当に良いのでしょうか…」
本来ならば堂々と視察に出向くべき場所へ、何故か王は身分を隠して行きたいと申して仕方がなかったのであった。
その様に心底不安の表情を露わにする内官に対して王は。
「ほほぅ、其方はムソクの腕を疑っておると言うのか?ならば今直ぐにでも内禁衛将に申し付けてムソクを任から解くとするか」
その王の発言に驚いたのはソン内官であった。
まさか、その様な事を王命で下されれば…
内禁衛将が大変な事になってしまうと慌てたのだった。
勿論、王はその内官の胸内も察していてわざと意地の悪い事を言ったのであって。
まさか実際にその様な命を下すつもりなど、更々無いのであった。
ムソクの代わりになる様な腕の立つ剣士は他にはおらぬ。
それが宮中内で皆の共通認識であったからだった。
「…お前は相変わらず意地が悪いな」
王宮外では不審に思われぬ様に並んで歩く二人。
「なんだ聞いてたんだ」
「あぁ、あんなに馬鹿でかい声で話していたのに内緒話か?わざと聞こえるようにしていたとしか思えないな」
「ふふ、やっぱりムンさんにはばれていたんだね」
「はぁ…わざとか…しかし何故そんな事を…?」
「ムンさんを特別視しているって宮中内では専らの噂だって知らない?」
「……」
「ふっ…知らない訳ないよね。だってムンさんは私に近付くのを人一倍警戒しているもんね」
「なら、何故…」
「牽制かな。ムンさんを特別視する意味を再確認させたかったんだ。あの者に」
「だからって……馬鹿な事を」
「馬鹿!?なっにぃ~私とムンさんの仲を嫉妬している護衛に対して牽制ぐらいいいでしょ!?本当は三人体制じゃなくてムンさん一人でもいいって思っているのにっ‼︎」
ぷりぷりと今にもはち切れんばかりの艶のある頰を膨らまして、ムソクに噛み付いた。
そんな王を見てムソクは心底嬉しかった。
けれど、意地の悪いのはムソクも同じ。
「特別視は剣の腕だけか?こっちの関係はあいつに教えてやらなくてよかったのか?」
今にも噛み付きそうな勢いであった王もムソクのその含み笑い越しの言葉に咄嗟に身を竦め。
「…こっち…?」
じりじりとにじり寄るムソクに終いには道の端に追い詰められる。
「あぁ、こっち…」
ぺろりと舌が王の首筋を舐め取った。
少し塩気がぴりりと舌に効き、ムソクはそのまま王の耳元に唇を移動させ。
「明日は長い、今日は早々に疲れを癒そうではないか…なぁ、ユン」
怯む王の腰を抱き、一軒の宿へと入ったのであった。
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