2015_09
19
(Sat)12:30

ムソク様の憂鬱 #5





「どうした、散々昔話にでも付き合わされたか?疲れが出ているな」


ムソクはまだ寝ている王を起こさぬように寝所から静かに立ち去ろうとし、交代で護衛につく者に顔色を伺われた。


「無駄口を叩かず早くゆけ」


そう口にするムソクの顔には笑み一つ無かった。


「おおっ、怖っ」


軽口を叩きムソクの反応を楽しむ同僚に一瞥をくれると他には何も言わずその場を後にした。


このような者に何を申しても無駄なだけ


ムソクの心は王の為に捧げるのみ。

他の者など…





















『…ねぇ、隠れんぼしない?』


父の使いで宮中には幾度か出入りをしていた。

だが、この様に自分より幼い子供を見掛けたのはその時が初めてであった。

父の使いは既に済んでいる、少しなら付き合えるとムソクは考えた。


『あぁ、分かった』


『良かった‼︎…あの、お兄ちゃんの名前は…』


『ムソクだ』


『ムソクさん!ふふ…』


『お前は?』


『ユンだよ…宜しくね、ムンさん』


差し伸べられた手は柔らかく、ムソクが握り返すとその掌にすっぽりと隠れてしまう程に小さかった。


あの幼き日に。

その小さき手をこの手に重ねてから。


ムソクの心には既に"恋"と言う名の花が種を落としていたのであった。




世子様である事は直ぐに分かりうる事。


しかしながらムソクはユンへの想いを摘み取る事など出来やしなかった…


消すに消せぬ想い。


ムソクはひたすらなまでに自身を追い込み、剣術の腕を上げ続けた。

さすれば、その想いはいつか時が薄く流してくれると信じて…



しかし、そのさなか。


ユンの父、先代の王の死去。


早過ぎるその死に良からぬ噂が飛び交った。



まだ幼いユンに伸し掛かる重圧。


ムソクの眼には、屈託の無い笑顔を浮かべるユンが日に日にその笑みを失ってゆく姿が痛々しく映っていた。


"あの幼き手を…俺がお護りしなければ…"



ユンとそう年端も違わないムソクの心にユンへの深い"愛"が芽生えたのだった。







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