岐路 episode 6
「残念ながらそれは夢じゃないな」
一通り話を終えた僕にキュヒョナが呟いた
「分かってるよ…」
はぁぁぁぁと大きな溜息と共にテーブルに突っ伏した
「何でお前はそんなに嫌なの?」
「いや…別に嫌って訳じゃないけど。人前で歌うとか顔を晒すとか…これまでの生活からは考えられ無い話だろ?」
「まぁな」
「僕なんかで…とか、裏方でコツコツ作ってる自分が似合うって言うか…住む世界が違うんじゃないか…とか」
テーブルと睨めっこしながらぶつぶつと話をしていると
「…はぁ、お前ね。全然分かってないな」
頭の上からキュヒョナの呆れた声が降って来た
「今さ、どれだけ凄いチャンスが巡って来てるのか本当に分かってないんだな?!」
「…ふぇ?…チャンス?」
「そうだよ、こんな棚からぼた餅みたいにホイホイとステージに上がれるなんて俺から言わせれば奇跡だって事を言ってんだよ」
「………」
「チャンミナ、SM事務所には沢山の練習生が居るの知ってるだろ?俺達はその中から這い上がって今の地位を獲得したけど、未だにステージに上がる日を夢見て励んでる人だってまだまだ居るんだよ…」
そうだ…僕が事務所に通うようになってびっくりしたのは練習生の多さだった
いつデビュー出来るか分からない日々を懸命に過ごしている彼等を知ったんだ
「俺はチャンミナに出会って心底ホッとしたんだぞ。こんな奴が同じ事務所に居なくて良かった、俺のポジションは危うかったなって」
「嘘…だ」
「こんな事嘘付くかよ?俺はお前のカラオケの歌声にもビビったし、それにその容姿な!普段は目立たないようにしてるから気付かない人も居るけど…めちゃくちゃカッコいいから!!」
ぶっきらぼうに吐き捨てるキュヒョナの横顔は少し赤くなっていて僕は嬉しさが込み上げてきた
やっぱり…こいつに相談して良かった
本当は迷っている自分の背中を誰かに押して貰いたかったのかもしれない
「あは…キュヒョナ、ありがとう」
「まーな、もっと自信持てよチャンミナ!それと…」
「ん?」
「親父さんに認めて貰いたいんだろ?」
あっ…そう言えばキュヒョナには音楽の道に進んだ経緯を話してたっけ
「うん…」
「なら尚更やってみるべきなんじゃないの?」
僕が今も抱えている問題をキュヒョナに突かれ暫く何も答える事が出来ないでいた…
するとそこへ聞き覚えのある…あの笑い声が!!
「あーっはーはー!」
店の奥で店主と仲良く話しているユノの姿が見えた
げっ、今一番会いたくない相手………
「あっ、ユノヒョン!お疲れ様です」
「おっキュヒョナ?この店に来てたのか」
「はい!もしかしてここ、ヒョンの行きつけですか?この前ドンヘヒョンから連れて来て貰ったんです」
「そっ、美味いだろ♪あれ?チャンミナ?」
キュヒョナの陰に隠れるように席を移動していたのに、見つかってしまった…
何て会話をしたらいいのか迷っていたら
キュヒョナがその空気を察して僕の肩を引き寄せ
「今日は親友とヲタ会をしてました♪なっチャンミナ!」
「無理にでも笑え」と小声で囁かれユノに向けて精一杯の作り笑いをしてみせた
でもユノは少し目を合わせるとすぐにキュヒョナに視線を移して
「…そっか、まっゆっくりして行けよ。ここのタッカンマリは格別だからな!」
とそれだけ残してまた店主の元へ戻ったんだ
あれ…なんかいつものユノと少し違った?
キュヒョナが居たからヒョンモードだったのかな…
その後、お会計は僕の奢りだとキュヒョナに言われて渋々払いに行ったら"ユノさんから多めにお支払い頂いてます"と言われてしまい
僕の頭からさっきの疑問はすっかりと消え去ってしまったのだった…

一通り話を終えた僕にキュヒョナが呟いた
「分かってるよ…」
はぁぁぁぁと大きな溜息と共にテーブルに突っ伏した
「何でお前はそんなに嫌なの?」
「いや…別に嫌って訳じゃないけど。人前で歌うとか顔を晒すとか…これまでの生活からは考えられ無い話だろ?」
「まぁな」
「僕なんかで…とか、裏方でコツコツ作ってる自分が似合うって言うか…住む世界が違うんじゃないか…とか」
テーブルと睨めっこしながらぶつぶつと話をしていると
「…はぁ、お前ね。全然分かってないな」
頭の上からキュヒョナの呆れた声が降って来た
「今さ、どれだけ凄いチャンスが巡って来てるのか本当に分かってないんだな?!」
「…ふぇ?…チャンス?」
「そうだよ、こんな棚からぼた餅みたいにホイホイとステージに上がれるなんて俺から言わせれば奇跡だって事を言ってんだよ」
「………」
「チャンミナ、SM事務所には沢山の練習生が居るの知ってるだろ?俺達はその中から這い上がって今の地位を獲得したけど、未だにステージに上がる日を夢見て励んでる人だってまだまだ居るんだよ…」
そうだ…僕が事務所に通うようになってびっくりしたのは練習生の多さだった
いつデビュー出来るか分からない日々を懸命に過ごしている彼等を知ったんだ
「俺はチャンミナに出会って心底ホッとしたんだぞ。こんな奴が同じ事務所に居なくて良かった、俺のポジションは危うかったなって」
「嘘…だ」
「こんな事嘘付くかよ?俺はお前のカラオケの歌声にもビビったし、それにその容姿な!普段は目立たないようにしてるから気付かない人も居るけど…めちゃくちゃカッコいいから!!」
ぶっきらぼうに吐き捨てるキュヒョナの横顔は少し赤くなっていて僕は嬉しさが込み上げてきた
やっぱり…こいつに相談して良かった
本当は迷っている自分の背中を誰かに押して貰いたかったのかもしれない
「あは…キュヒョナ、ありがとう」
「まーな、もっと自信持てよチャンミナ!それと…」
「ん?」
「親父さんに認めて貰いたいんだろ?」
あっ…そう言えばキュヒョナには音楽の道に進んだ経緯を話してたっけ
「うん…」
「なら尚更やってみるべきなんじゃないの?」
僕が今も抱えている問題をキュヒョナに突かれ暫く何も答える事が出来ないでいた…
するとそこへ聞き覚えのある…あの笑い声が!!
「あーっはーはー!」
店の奥で店主と仲良く話しているユノの姿が見えた
げっ、今一番会いたくない相手………
「あっ、ユノヒョン!お疲れ様です」
「おっキュヒョナ?この店に来てたのか」
「はい!もしかしてここ、ヒョンの行きつけですか?この前ドンヘヒョンから連れて来て貰ったんです」
「そっ、美味いだろ♪あれ?チャンミナ?」
キュヒョナの陰に隠れるように席を移動していたのに、見つかってしまった…
何て会話をしたらいいのか迷っていたら
キュヒョナがその空気を察して僕の肩を引き寄せ
「今日は親友とヲタ会をしてました♪なっチャンミナ!」
「無理にでも笑え」と小声で囁かれユノに向けて精一杯の作り笑いをしてみせた
でもユノは少し目を合わせるとすぐにキュヒョナに視線を移して
「…そっか、まっゆっくりして行けよ。ここのタッカンマリは格別だからな!」
とそれだけ残してまた店主の元へ戻ったんだ
あれ…なんかいつものユノと少し違った?
キュヒョナが居たからヒョンモードだったのかな…
その後、お会計は僕の奢りだとキュヒョナに言われて渋々払いに行ったら"ユノさんから多めにお支払い頂いてます"と言われてしまい
僕の頭からさっきの疑問はすっかりと消え去ってしまったのだった…

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