上体を起こすとスプリングの軋む音がやけに響き。
そしてこの硬いベッドが意外と体に負担を掛けていて。

寝起きと共に深い溜め息が漏れる。

昨夜は眠れたような寝ていないような。
誰かの視線を感じているようでなかなか寝付く事が出来なかった。

ふと、スマホに視線を落として。
また溜め息を吐く。

誰からも連絡は無さそうだった。

重い腰を上げて、簡素な洗面所に向かうと。
鏡に写る自分の顔にまた。
虚しさが込み上げる。

「酷い顔だな…」

目の下のクマ。
そして無精髭に疲れ切った表情。

持って来た髭剃りを取り出し。
泡立てたフォームを顎に乗せ。
歯を立てる。

「痛っ、、、」

白い泡が。
じわじわと赤く染まりゆく。

ガンッ！！

鏡に怒りをぶつけた所で何かが変わる訳でも無い。
そんな事、分かっている。

どうしようもない怒りが吐き出す場所を探して彷徨っている…そんな感じだった。



◆＊◆＊◆



「あ、…室、ちょう…」

出勤した所を捕まえて。
社内のトイレに強引に連れ込み。

「んんっ、、はっ、、ぁん、、ん…ふ…」

背中がしなるのも構わず。
唾液の水音が響き渡る濃密な口付け。

きっちりと締められたネクタイを外し。
剥き出しになった鎖骨に沿って舌をなぞらせる。

「っあ・・・・ゃっ…」

漏れた吐息に煽られるように。
柔らかな肌に痕を残す。

ひとつ。

ふたつ。

みっつ…

これは俺の物だと。

目に見えぬ彼の恋人に嫉妬を隠せなかった。



◆＊◆＊◆



「ユノ、、、あっ、、はぁ、はぁ…あっ、、！」

彼の向こうにソウルの夜景が広がり。
窓に付いた手の熱でその周りだけが白く曇っていた。

誰も居ないオフィスのフロア。
監視カメラの位置は把握している。

今日も彼のアパートには行けない。
恐らく恋人が待っているのだろう…

ホテルに行く時間も無く、こうして職場で。
彼を求めた。

「ユノ、、まっ、、て…」

その、待つは。
どんな意味を持っているんだ？

律動だけが激しさを増す。

けれどチャンミンは俺の手をすっと取り。
自分の顔へと持って行き。

そして。


「…ユノ…好き…」


俺の手の温もりに縋るように。
頬ずりをする。

掻き抱く事で現実から逃れようと。
そんなちっぽけな俺の心に。

彼の想いがふっと溶け込む。

「チャンミン…」

その細い腰を抱き締め。

「…ごめん」



愛してる。

狂いそうな程、チャンミン…

お前を愛しているんだ。



「ユノ…ごめんね…」



震える肩にそっと口付けた。




なぁ、チャンミン。

俺の愛はお前を苦しめているのか…？







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