チッ。俺が寝ている隙にジフンの奴…

ジフンとは長い付き合いで、所謂、腐れ縁ってやつだ。
けれど昔から腹を割って話す仲間をあまり作って来なかった俺の唯一のダチ。

こいつは男も女もイケるクチなのは薄々気付いていて。
けれど、俺にはそんな気は一切見せないから自分は対象外だと分かっていた。
だから別に普通に仲間としてやって来れたんだと思う。

そんなジフンはなかなかの苦労人でもあって。
この店はお袋さんの忘れ形見だった。
そこそこ常連も出来ていて、良い店だと地元で評判だったのをジフンは潰したくない一心で守り抜くと決めたんだ。

そんな奴を俺は心の底から尊敬していて。
だからこそ。
チャンミンをこの店に連れて来ようと思った。

ジフンなら気付く筈と。
俺の気持ちが何処に向いているのかを。

そして、また。
チャンミンにも見せたかったんだ。
俺の唯一、心を許せる友を。

そうだって言うのにジフンの奴…
チャンミンにちょっかい出してんのかよ。

地元に戻った事で気が緩んで潰れてしまった自分への情けなさと。
俺の意図と反してチャンミンに手を出そうとするジフンに苛ついて。
起きて精算してしまおうとしたんだ。

けれど…

ジフンがチャンミンに変な事を言いだすから。
すっかり起きるタイミングを失って。
更にチャンミンの返事が気になって動けない。

しかし。
その後、チャンミンは口を噤んで何も言わなかった。

そして、ジフンもそれ以上突っ込んで聞こうとはしなかったんだ。



◆＊◆＊◆



ホテルに戻り。
酔いを覚ます為に先にチャンミンがシャワーを浴び。
その次に俺がシャワーを浴びに行った。

ガシガシと濡れた髪をタオルで乾かしていると。
ひょこっとバスローブ姿の彼が顔を覗かせる。

「ユノ…ジフンさんから差し入れ貰ったけど食べる？」

チャンミンは目の前にアイスのカップを2つ手に持って。
アルコールでほんのり染まった顔を傾げてみせる。

俺はもうすっかり酔いは覚めていた。

「ん…チャンミンは？」

ふふっと肩を揺らし。

「別腹」

と嬉しそうに笑って。
手に持っていたカップをひとつ開け始めた。

「ん…美味しい…」

満足そうな顔につられて、俺も残りを開ける。

「おっ、チョコだ！」

するとチャンミンはクスクスと笑い。

「ユノって可愛いね…」

そう言って、唇をそっと重ねる。

くちゅり。

「…溶けるぞ」

バニラの香りが鼻を抜ける。

「分かってる…」

また一口アイスを含んで。

くちゅり…

絡み合う舌先は冷たいのに。
頭の中は痺れるように甘い。

ギシッ…

カップを片手に俺をベッドに押し倒して。
溶けかかったバニラアイスは俺の胸元へと滴り落ちる。






その夜の彼は、激しかった。







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