Love Triangle #6

「しつ…ちょう…」
どれ位の時間をそうしていたのだろうか。
彼の唇はぽってりと赤く腫れ上がり。
そんなになるまで我を忘れて。
求めてしまった。
年甲斐も無く…恥ずかしい。
けれど彼の仕草、そして表情のひとつひとつに心が跳ねる。
それはまるで淡い恋心にときめく思春期の少年のよう。
そろりと絡められた指に愛おしさが込み上げる。
離れたくない。
「もう…帰らないと…駄目ですね」
離したくない。
「あぁ…」
◆*◆*◆
乗り込んだタクシーの中で。
自宅の住所を聞き出すよりも早く。
俺の横で眠りに就くチャンミン。
一瞬、躊躇して。
マンションの住所を伝えた。
妻に対しての後ろめたさか。
それともこのまま別の場所へと…彼を連れて行きたい気持ちの表れなのか。
俺の心は何処にあるのだろう…
◆*◆*◆
男としての重みはあるものの。
覚悟していたよりも軽かった体を抱え。
玄関の扉を開いた。
「あっ…えっ!?どうしたの?」
ぼんやりとしていて妻に連絡をするのを忘れていた。
俺にしては珍しい。
「仕事帰りに飲んで潰してしまったんだ。悪いけど布団を用意してやってくれないか」
その言葉に慌てて奥へと消える妻の姿に僅かながら罪悪感を感じる。
リビングのソファーに彼の体を降ろしてネクタイを緩めさせた。
んんッと、体を捩るも眠りからは覚めない様子。
自然と手が伸びてその体に触れた。
「用意出来たけど…」
妻の声に、触れていた手を引っ込める。
彼を見ていると此処が自宅だという事さえも忘れてしまいそうな自分に。
怖さを覚えて。
駄目なのは分かっている。
頭では分かっている事なのに。
安らかに眠る寝顔にそっとまた触れてしまう。
朝、目覚めた時。
この家に居るのがこの顔であればいいのに、とさえ。
思う自分が怖かった。
◆*◆*◆
パートナーを組んでから初めての出張が入った。
行き先は釜山。
チャンミンは初めてだと喜んで。
その嬉しそうな顔に。
仕事だという事も忘れて浮き足立つ。
出張初日。
仕事が予定よりも早く終わり。
夕食までの時間を潰す為に街の繁華街へと誘った。
見慣れない露店や食品。
ソウル育ちの彼は見るもの食べる物が新鮮だと。
目を輝かせて。
「有難う御座います」
小さく微笑んで嬉しそうに御礼を言う。
「いつか一緒に来たいと思っていたんだ」
そう。
いつか此処へ彼を連れて来たいと。
「…有難う御座います…」
もうこの場でこの目の端を赤く滲ませた彼を。
抱き締めてしまいたい…
夕食は何を食べたかな。
あまり覚えていない。
ただ。
いつも言葉数が少ないチャンミンが饒舌だったのだけは記憶にある。
ホテルの部屋はツイン。
もう駄目なんだ。
もう。もう、もう…
「抱きたい」
後ろから抱き締める体が
少し。
震えていた。
いや。
震えていたのは俺の腕だったのか。
そんなのどっちだかなんて覚えていない。
もう。
限界だった。
彼に触れたいと思う心が。
溢れ出して止まらなかった。
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