2015_03
12
(Thu)02:25

君ヲ想フ …君のいない夜… 16





風が通り過ぎて 君の香りがした

街は涼しい顔して

愛とか 夢とか



あの日

止まった時を 今は動かせない

未来に進むばかりが 良いとは思えなくて…





ザァ…と春の嵐が吹き荒れて
思わずギュッと目を閉じた

静かに風が止むの待つ


「…あの」


空耳…?


ゆっくりと瞼を押し上げて
声の聞こえた方へ振り向くと

「あっ…」

目の前に広がる光景に息を飲む


ぶわっと夜空に咲き誇る淡い花の大木

ひらひらと春の風に舞い上がる

桜の花びら…


「…綺麗」

自然と口から零れ出る




「…あの、そこに誰か居るんですよね」


あっ、そう言えば…


太い幹の傍にゆらりと立つ人影

…………っ…


言葉を失った


月の照らすほのかな明かりの下で
佇むその姿はまるで

桜の木に宿る精霊・・・


色白い顔にくっきりと見開く大きな瞳
頭上で輝く淡い花にも劣らない
儚げなその美しさ…

「綺麗…」

それ以外の言葉が見つからない

生温い春の風がふわっと吹き抜けて
ひらひらと舞い上がる花びらが優しく頬を撫で下ろす


「すみません…もっと近くに来て貰えますか」

声を掛けられるまで…
ずっとその人に見惚れていた


「あ、、すみません」

近付いてみて…驚いた
その人が自分と同じ少年だという事に

そして腕の中で大事そうに抱える何か…

「子猫がこの樹の上で鳴いていたんです。親猫も見当たらなくて…僕が登って助けようとしたんですけど、着地に失敗して…眼鏡が」

そう話す彼の手の中には壊れた眼鏡

「…見えないの?」

その言葉にこくんと頷く

サラッと流れた髪に
シャンプーのいい香りが風に乗った

そしてまた顔を上げて向き合う髪の隙間から
覗く大きな瞳

俺を見つめている…


ドキン


「人が通らなくて…どんどん暗くなって…」


小刻みに震え出す細い体
そんな彼の腕の中にはすやすやと眠る子猫


俺が通るまでどんなに不安だったんだろう…
彼の思いが心を締め付ける


だから

彼の気持ちが軽くなればいい
もう心配しなくていいよって

その思いが無意識に
彼を自分の腕の中に包み込んでいた


まだ線の細い華奢な体はすっぽりと腕の中に納まる




「ありがとう…」

震えが治った彼が顔を上げて
ふんわりと笑った


ドキン


片眉を下げて
目を細めるその愛らしい笑顔に

心が奪われた



…えっ…どうした…俺…


目の前の知らない男の子に
心臓がドキドキするなんて…

その感情が何なのか
まだ幼い俺には分からなかったんだ


だからぶっきらぼうに

「家、何処?」

そう言って彼の手を掴んで歩き出した



自宅までは離れているから最寄りの駅までお願いしますって
彼は遠慮がちに伝えて来る


繋いでいる手が冷たくて
俺はギュッと強く握り締めた


本当はもっと優しく温めてやりたいのに…


でもそんな気持ちが自分の中に湧き上がる事が
いけないような気がして

無言で駅までの道のりを歩み進めたんだ


夜空を見上げると月の淡い光と

ぽつぽつと輝く星達と

そして俺の吐き出す白い息だけが浮かんでいた




駅が見えてくると彼の母親らしき人が
俺達に気付いて

「チャンミン!!」

心配した顔で駆け付け彼を抱き締めた

母親の腕の中で緊張が解けたのか
その場で彼は崩れ落ちた



俺は駆け寄りたい気持ちの反面

ずっと早鐘を打ち続けている心臓の謎が分からなくて

その場から走り去ったんだ






あの時

もっとちゃんと話をしていたら

こんなに遠回りをしなかったんじゃないか…




ずっとずっと後で

この後悔が俺を苦しめ続けるなんて知る由も無い

幼い俺の

桜の花が魅せた出会いだった…








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C.O.M.M.E.N.T

No title

そんなに幼いころから!?
私まで苦しくなる。

そして、、
ウ〜ン・・・・・

2015/03/12 (Thu) 08:15 | 723621mam #- | URL | 編集 | 返信

Re: No title

723621mam様

おはようございます、コメ有難うございます(^-^)

ユノ君の笑顔に秘められた思い出がやっと出ましたね
少し切なくなるような出会いでした

幼すぎる故に戸惑った彼の葛藤が伝わったようで何よりです

mamさんのウーンの続きが気になりますけど・・・

あっ、"桜の精"をチャンミンに使わせて貰いました♡
あのコメの後にこの話に加筆修正したんです(笑)
良いものは直ぐに吸収しますよ〜

2015/03/12 (Thu) 09:03 | shin #- | URL | 編集 | 返信

No title

ウ〜ン、は確かに気になるね。
読み返して自分でも思った。笑

いやね、昨日のお話を思い出して、
妄想が暴れまわった状態のうーんだったの。
あのネコちゃんはこのネコちゃんか?
そんなに長生きするか?
いや、桜の精(笑)に抱かれてたから、不思議な力をもらったか?
などなど。

2015/03/12 (Thu) 11:47 | 723621mam #- | URL | 編集 | 返信

Re: No title

723621mam様

いやー、なるほど(笑)コメ貰ってやっとスッキリしましたよ(。>∀<。)

もうオチに気付いたのかな・・・とドキドキ
気付いたとしても最後まで黙ってて下さいね(^_−)−☆

そこ、やっぱり気になりました?
前回のお話で擦り寄ったのが何か、何年前の話なのかわざと明記しませんでした

何年前って限定するとその頃のチャンミンが映像で浮かび上がりますから、それは避けたくて

儚げな美しさを放つチャンミンは読む人に託しました…♡

それにしても現在の彼等の年齢は…
そこもまだ突っ込まないで下さいね(⌒-⌒; )

猫ちゃんは・・・これはまた今度に〜

2015/03/12 (Thu) 12:26 | shin #- | URL | 編集 | 返信

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