純真 episode 6

「お前ら…何ボサッと突っ立て話してんだよ。早く開店準備しろよ。
ったくお前もぶつかってくんなよな。」
僕がぶつかった相手が後ろから苛立つ声で僕の肩を掴んで振り向かせた。
目の前にはあの綺麗な人。
確かNo.2のヒチョルさん…
「うっ…っ」
近い!顔が近い!!!
どんどん近付いてくる綺麗な顔。
あまりの近さに背けようと目線を外そうとした最中
ガシッと僕の頬を両手で挟んで逃がさないヒチョルさん。
その目は僕を見据えたまま
「なぁ、ミノ。
このバンビちゃん、もしかして俺の担当?」
「はい♪そうでーす。」
何だか嬉しそうなミノ君の声。
「そうか…じゃあ、挨拶しないとな。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべると見つめていた瞳は妖艶な眼差しに変わり、ちろっと下唇を舐め
「バンビちゃん宜しく…」
と更に顔を近付けて来た。
キスされる…
と思わず目を瞑った瞬間
グイッと後ろから力強い腕に顔を押さえ込まれた。
…あっあの香り…
「っ…ユノ!!何邪魔してんだよ!」
「ヒョン、あんまりがっつかない方がいいですよ。
仔鹿が狼に食われるみたいに怯えてます。」
突然の事で足が震えているのに耳元で囁く低い声と吐息に背中がゾクリとした。
「はぁ。取って食わねーし。
ちょっと冗談だっつーの、お前には通用しないか。ったくよ。」
チッと舌打ちをしながらそう言い残すとヒチョルさんは去って行った。
ふわっと解き離れた腕に慌てて僕は
「あっありがとうございます!!!」
と頭を下げて精一杯の御礼をした。
「気にしなくていい。」
ぽんぽんと僕の頭を叩きながらその人はフロアに消えて行った。
あの残り香が僕の体を包んでいて少し身体が熱くなるのを感じた。
側で様子を伺って居たミノ君とテミンが興奮気味に僕に近寄って来て。
「いきなり凄かったね!
いや~絶対にヒチョルヒョンのタイプだとは思ってたけどまさかね♡
キスとか…」
「ミノヒョン!やっぱりあれは冗談じゃなくて獲物を捕らえた目だったよね~
きゃー♡」
と僕を置いて2人で盛り上がっている。
「ちょっと2人共、僕にちゃんと説明してくれないかな…」
少し落ち込んでいる僕に気付いた2人がやっと心配をしてくれて
「ごめんね、チャンミンの気持ちを差し置いて盛り上がっちゃった。
実は…ヒチョルヒョンはこのお店のNo.1をずっと守って来てたんだ。
でもここ1年はユノヒョンの指名が多くて。
ヒョンが他の店から声が掛かっているんじゃないかって噂もあってさ。
でも長い付き合いのお客様も多くてお店としてはヒョンを手放したくないんだよね。」
「それが僕とどう関係があるの…?」
「ん~それはねぇ、、
ヒョンは綺麗な人が好きなんだ。
だから担当スタッフがチャンミンならお店に残ってくれるかなとマネージャーが考えたわけ。」
「…それって変じゃないの?
僕みたいな男に引き留める力があるの?」
「あっ、ヒョンはバイだから大丈夫♪」
えぇっ~?!何だよそれぇ~!!
それって、それって…僕にヒチョルヒョンの相手をしろって事なのかぁ?!
はあぁぁぁぁ。
思いっきり溜息を吐いてる僕を他所に今度はテミンが
「でもヒチョルヒョンよりもびっくりしたのが…ユノヒョン!」
「だよな!!あのユノヒョンがチャンミンを庇うなんて有り得ない。
びっくりして声が出なかったもんな。」
その言葉の意味を知りたくて
「何で?助けてくれたのは可笑しな事?」
と聞くと、2人は顔を見合わせて
「「有り得ない!」」
と声を揃えられてしまった。
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