2015_01
10
(Sat)00:30

止まない雨の癒し 1

"いらっしゃいませ"

"こんにちは"

"今日も雨ですね"

"えぇ…"



その人はいつも雨の日に訪れる大切なお客様

ふふ、何故大切かって?
それは僕がその人に惹かれているから-------


初めて来店されたのは6月の梅雨入りの頃
しとしとと降りしきる雨の中

その人は訪れた


少し濡れた髪を掻き上げる仕草
睫毛をうっとりと伏せる切れ長の目
綺麗なカーブを織りなす鼻筋
しっとりと濡れた唇



…そのどれもが僕の心を魅了し惑わせた



"このギャラリーの写真は…"

"私が撮った物です"

"そうですか…少し見てもいいですか"

"えぇ…どうぞ、ごゆっくり"


本当にゆっくりと一枚一枚丁寧に写真を見つめる姿に心が温まり、そっと横顔を盗み見た


初めの印象とは違い少年のような眼差しを写真に向けていて
…恐らくカメラが趣味なのかなと感じた



その人の周りには酷くゆっくりとした時間が流れ静かに時が過ぎた


頃合いを見て珈琲を勧めると遠慮がちに口を付けて啜り始めた

でも僕は気付いたんだ…
眉間に寄せられた皺


"ココアにしましょうか"

と声を掛けると気まずそうに

"ありがとうございます"

そう、はにかむ笑顔が似合う人だった





それからは毎日雨が降らないかな…
と空と睨めっこ

休みの日を利用して撮った写真を見て貰いたくて心待ちにしていた

と言うよりも…その人を心待ちにしていたかな





何度か訪れて少し話が出来るようになった頃

ココアのカップを手に持ちながら
気持ち良さそうにソファに
身を沈めている彼


夢の世界に居るのか"クスクス"と笑う穏やかな寝顔……


その綺麗な黒髪を梳き
頬をそっと撫で下ろし
唇に触れる



雨の日に訪れる僕の癒し


…明日も雨が降ればいいな






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2015_01
11
(Sun)00:00

止まない雨の癒し 2

"いらっしゃいませ"

"こんにちは"

"今日も雨ですね"

"えぇ…"




今日も変わらないあの優しい微笑み

やっぱり来て良かった-----------------



このお店を見つけたのは
6月の梅雨入りの頃

雨が降ると仕事が休みになるから
趣味のカメラを片手にぷらぷらと
街を歩いていたんだ

雨の日に顔を出す"かたつむりさん"や
水溜りに出来る波紋
子供達の黄色傘

パシャパシャと夢中で撮り続けていたから
傘を差すのも忘れてたっけ


気付くと普段は通らない小路
ちょっと冒険気分でワクワクしながら
道を進めると"あっ…"

ウィンドウに飾られてある
一枚の写真に足が止まった

….すごい…

何が凄いかは上手く説明出来ないけど
ボクの心を掴んで放さない何かが
その写真にはあったんだ

そのお店がフォトギャラリーだと分かって
手にしていたカメラをそっとリュックに仕舞い
そろそろとドアを開ける


"いらっしゃいませ"

優しくふわりと笑顔を向ける男の人

…綺麗な…人…

それが彼の第一印象だった

つい見惚れていた自分が恥ずかしくて
髪を掻き上げて気持ちを落ち着かせ
店内の写真に目を移した

一枚一枚に彼の世界観が表現されていて
時間を忘れる程に見入った

差し出された珈琲に少し戸惑ったけど
ボクもいい大人だし飲まないのは失礼かな
なんて見栄を張っちゃって

でもね
その人は気付いたんだ…ボクが苦手なのを

凄く恥ずかしかったけど
その気持ちが嬉しくて
体も…心も温められたんだ

このお店は….
彼の持つ優しい空気に満ち溢れていた

あれから何度か通う内に少しは会話を
するようになったけど
やっぱり緊張して上手く話せない

ガサツなボクが出てないかな…
そう思うと言葉に詰まるんだ


緊張を解す温かいココアと
しとしとと降り注ぐ雨音に
いつしか夢の世界へ入り込んだ


とても気持ちのいい夢を見ていた
そしたら柔らかな温もりが頭から通り抜け
ふわっとした感触が唇から離れた

ん………、今のは夢…?


目を開けるととても近くで覗き込む彼の顔


"起こしてしまいましたね"

にっこりと微笑むその手にはブランケットが…

"あっすみません、、、もう帰りますから"

慌ててリュックを持ってお店を出ると

-CLOSE- の看板

…あっ




外は雨がまだ止まずに降り続けていたけど
僕の心は陽だまりのように暖かった







季節は夏に移り変わろうとしていた----------





See you again






2015_01
12
(Mon)00:00

止まない雨の癒し 3 -梅雨晴-

梅雨も明け

本格的な夏が来た






"次のお休みをボクに預けてくれませんか?"



近頃は雨で仕事が休み…なんて日は無く
お店になかなか行けない週が続いていたんだ

だからボクは思い切って
仕事が早く終わった足で
そのままお店に顔を出し

そう切り出してみた



ちょっと唐突すぎたかな…
勢いで言ったつもりは無かったけど
何だか急に恥ずかしさが込み上げてきちゃって
視線を彷徨わせていると

"はい、喜んで…預けますよ"

片目を細めてにっこりと微笑む彼


…うわ…


何で彼の笑顔に胸がふわふわしちゃうのかな…




---------------------------------------------------




"次のお休みをボクに預けてくれませんか?"



近頃なかなか訪れなくなった彼から
嬉しい…お誘い

ふふ、そんなの勿論喜んで預けますよ

だから次の休みがこれ程
待ち遠しく感じた事は無かった



そして待ち焦がれたその日

"あの、、会社から借りて来た車で…"

なんて少し照れ臭そうな姿も
いつもよりお喋りな一面も
太陽の下で見る笑顔も

全て新鮮だった





---------------------------------------------------




いつもは汗臭い仕事仲間と乗る車に彼を…
隣からふわっと漂う石鹸の香り

それだけで何だかドキドキしちゃって
いつものお喋りなボクが顔を出したんだ

そっと横を見るとクスクスと笑う彼
ボクの話で喜んでくれてるのかな
それって何か嬉しいな

…良かった、誘って良かった


何で彼と居るとこんな気持ちになるのかな…



---------------------------------------------------



"一緒に行きたい所があるんです"


そう言って彼が見せた景色に
息を飲んだ…


それは
視界を埋め尽くす…向日葵の絨毯

"僕のお気に入りの場所なんです"

ニコニコと嬉しそうな彼は
太陽のように眩しくて
まるで向日葵が咲いたようだった



彼が向日葵を夢中で撮り続けて居る姿を
こっそり写真に収めたのは
内緒だけどね




それにね…
僕に聴こえないと思って
向日葵って気持ち良さそうに
歌ってた彼が可愛いと思ったのも
内緒………





心を込めて彼に

"また誘って下さいね"

そう伝えると
またあのはにかむ笑顔が眩しかった





See you again





2015_01
20
(Tue)15:30

止まない雨の癒し 4 -夕立ち-

"また誘って下さいね"

と言ってくれた彼の一言が社交辞令には思えなくて
ボクはまた夏の終わりに彼を誘ってみたんだ


するととても嬉しそうな彼の笑顔に
胸が温かくなるボクがいた

…本当にどうしちゃったんだろう




そしてお店がお休みの日

まだ暑さの残る日中の喧騒から離れ
郊外にある自然豊かな国立公園へ彼を連れ出した




"風が気持ちいいですね…"

うーんと背筋を伸ばして澄んだ空気を胸に吸い込む彼は
自然に溶け込んだ森の妖精のように美しかった…


ぽーっとその姿に見惚れていたら

"どうしました?お腹空きましたか?"

とあの優しい笑顔が覗き込んでくる


慌てて"はい"と答えてしまうと

"お弁当作って来たんです、先に食べましょう"

って…
うわっ、ボクの為に?…うわわわわ…嬉しい…


"キンパブが好きだって言ってたので…"

え…前に車の中で何気無く話した事を覚えてくれていたんだ…

それ…凄く…嬉しい…


トクン…





---------------------------------------------------





また彼からお出掛けのお誘いが来た

ふふ、ちゃんと僕の気持ちが伝わったんだね


もっと彼の事を知りたいし
もっと彼の笑顔に触れたいと思っていた

あの向日葵のような笑顔が僕の心を
温かくさせてくれていたんだ



せっかく自然豊かな所へ行くのだから
彼と二人でお弁当を食べたいと思って
朝早く起きて簡単な物を用意して出掛けた



まさかあんなに喜んでくれるなんてね…

ニコニコしながらしきりに

"美味しい美味しい"

と頬を膨らまして食べる姿があまりにも可愛くて

その様子を優しく見つめていた


こんな時間がいつも流れればいいのにね…







---------------------------------------------------





美味しいお弁当の後は少し散歩をしながら
次第にカメラを片手に自然を取り続けた


やっぱり彼はプロだから構図とか技術的な物が素晴らしくて
ボクは彼の写真に夢中になっていた



気付くと先程まで澄み切っていた空は暗雲が立ち込め
今にも一雨降りそうな天候に変わっていた

とその時

ザーッと一気に雨が降り出したんだ


そしてボクらは近くにあった東屋に駆け込んで
雨宿りをした



でも実は内心、不安でドキドキしていた…
だってボクはあれが苦手で……………






---------------------------------------------------





ピカッ

ゴロゴロゴロゴロ…


突然の夕立ちに慌てて雨宿りをしていると
背後から雷の音が響き渡って…

"ひゃっ"

と声と共に彼が僕にしがみ付いて来たんだ

すぐに離れようとするけれどまたも

ピカッゴロゴロ…ドカーン

と激しく稲光と雷鳴が響いてしまった



目の前には顔を僕の肩に押し付けて
ぷるぷる震える大きな体
手はギュッと僕のシャツの裾を掴んでいる


僕は体の向きを変えて彼を自分の胸に包み込み

そしてそっと背中に手を回して優しくあやすように撫で続けた…




---------------------------------------------------





ボクはやっぱり雷が怖かった…

稲光と雷鳴に心臓がぎゅっと縮こまってしまって
思わず彼にしがみ付いてしまっていたんだ

慌てて離れてもまた雷鳴が…


怖くて震えているボクを柔らかな腕が包み込み
温かい手が背中を優しく触れた


トクトクトク…


彼の心臓の鼓動がボクの緊張を和らげるように耳に伝わり
いつの間にか雨はすっきりと上がって青空が顔を出していたんだ


ずっと抱き締めて貰っていたのが恥ずかしくて
腕を解いて離れようとすると


"もう少しだけ…このままで…"


と聞こえた彼の声で動けずにいた



でも腕から伝わる温もりが心地良かった……


トクン…





---------------------------------------------------






離れようとする彼を引き止めてしまった

何も言わず大人しく腕に抱かれている彼が愛おしくて
つい…


"時々…こうして貴方に…触れてもいいですか"


そして


"え……"



と顔を上げて僕と目線を合わせた彼の唇に


そっと僕の唇を重ねた…








雨が上がった空には虹がうっすらと掛かっていて
僕の思いを繋いでくれているようだった




僕のキスを黙って受け入れてくれている彼の頬はピンク色に染まっていて

僕はそんな彼に夢中になっている自分に気付いていた



僕は貴方が好きなんですね………





---------------------------------------------------





キス…をされた


突然の事でびっくりして固まってしまったけど


嫌…じゃなかった



心臓がトクトクトクと早鐘を打っているのも分かった




そっと離れた唇に

名残惜しい…

と思った



ボクを見つめる優しい彼の笑顔にまた


トクン…


と心臓が大きく鼓動した





空には掛かる虹が優しくボクら包んでいた…







See you again




2015_01
24
(Sat)23:45

止まない雨の癒し 5 -秋雨-

あの夕立の…

キスをした日から…

彼はボクに触れなくなった



あの後、ボクが何も言えずに居たから…







あの後も何度か写真を撮りには出掛けたんだ


秋色に染まってゆく風景を

慈しむようにカメラに収める彼




その横顔を盗み見るだけで

胸の奥がきゅうって…




何なんだろう…



一体どうしちゃったの…ボクの心臓








---------------------------------------------------







あれ以来…


彼に触れていない…



あの時はつい…

そう、僕の想いで彼を抱き締めたんだ



そしてその想いのままに…




キスを…






彼はそれを受け入れただけ





優しい彼を困らせてしまったんだね





だから…もう…ね…









---------------------------------------------------





今日は仕事が休みで久しぶりに

彼のお店に足を向けていた




外は秋も深まり

長雨の季節になっていて

出会った頃に降っていた雨よりも

少し冷たさを感じたんだ






そして

ボクの心も…



少しだけ寂しさを感じているのは




これから彼にある事を




伝えに行くからなのかな…








---------------------------------------------------






彼が久しぶりにお店に訪れた





会えて…




嬉しいようなでも…少し


…切ないような




そして


彼はあのはにかんだような笑顔で


"仕事を辞めて、夢を追えるようになりました"


そう、僕に伝えたんだ…






彼はプロダンサーの夢を持っていた
けれどそれだけでは食べていけない

だから昼間は外で汗を流して働き
夜はダンスの練習に励んでいたんだ

その事は前に彼から聞いていたけれど…



"海外公演のダンサーとしてオーディションに合格したんです"

"だから…暫く、会えなくなります"






僕は何て返事をしたのか覚えていない

けれど今は…


ソファで眠る彼の横顔を見つめている…





もう…暫く…


会えないの…?




震える手を伸ばして


彼の頬の傷に


そっと触れた








想いを伝えられぬまま…


また貴方に触れてしまう



僕を


許して…







---------------------------------------------------






彼に会えなくなる…

けれど、夢を応援していてくれたんだ


だからちゃんと伝えなきゃいけないと思ったんだ




"おめでとうございます…"



喜んでくれた彼の笑顔が


少しだけ


哀しそうに見えたのは


ボクの気の所為…かな









そしてボクは

仕事と練習の疲れと

それと彼に伝えると言う緊張感を

ココアの香りで解放されて


また夢の世界へ入り込んでしまっていたんだ







ふわりと触れるあの温もり…



うっすらと瞼を開けて目に飛び込む

彼の寂しそうな顔




だから

ボクは思わず



その手を引き寄せていた







そして

唇が触れた…





トク…ン…



あぁ…やっと気付いた…











"好きなんです…"







---------------------------------------------------






触れた唇から


溢れた彼の言葉…





言えなかった僕の想いがそこにあった









"僕も…です"




胸が詰まって

それだけ言うのが精一杯だった





僕を優しく見つめる向日葵の笑顔が


くしゃくしゃに歪んだ



そして…




---------------------------------------------------






今にも泣き出しそうな彼が愛おしくて


また胸がきゅうっとなった




泣かせたくないんだ…




彼の両頬を掌に包んで


もう一度


その唇に





口付けを落とした…








トクトクトクトク…



彼を包む掌と重なる唇

触れ合う全てに心臓が鼓動を立てて

外にしとしと降る雨音と

静かに溶け合っていた




そのリズムを聞きながら


ボク達はいつまでも

お互いの熱を感じていた









好きな人とのキスはとてもふわふわして

離れたくなかったんだ…









See you again




2015_01
28
(Wed)16:00

止まない雨の癒し -氷雨-

ボク達は想いが通じ合った途端


離れ離れになってしまった




けれど


想いを伝えた事に後悔はしていなんだ





彼とは


まだ始まったばかり




ちゃんと…心で繋がっているからね




…心で…






---------------------------------------------------





彼と想いが通じ合ったあの日



触れ合う熱が永遠に続けばいいと願ったけど






彼はそっと唇を離し




"行ってきます…"



ってあの向日葵が僕の目の前で笑ったんだ






寂しくないなんて嘘になるけど


笑顔で送ってあげないと…




"行ってらっしゃい…"




そう言って


彼を腕の中に包み込んだんだ







---------------------------------------------------





離れてから




彼とは時々、お互いの撮った写真をメールしあったり


少しだけ寂しい時は声を聞いたり…





けれど



決してボク達は





…会いたい



とは言わない







その言葉を口にしてしまえば



この場から




直ぐにでも駆け出して



抱き締めてしまいたくなる…






---------------------------------------------------






初めて見る土地の風景や



僕の知らない人達に囲まれて写る彼の姿





時々、送られてくる写真に



この想いを馳せるだけ…







寂しい…

触れたい…



そして、会いたい…





その言葉を口にしてしまうと


笑顔で見送った僕の心は崩れてしまう





だから胸にその想いはそっと閉まっておくんだ






---------------------------------------------------






"来月…凱旋公演で帰ります"




電話口の向こうで



嬉しそうに微笑む彼の姿が



目に浮かんだ










会いたい




触れたい




この腕に彼を抱き締めたい








会えなかった時間分の


その想いを



たくさん、たくさん…



伝えるんだ







好き….貴方が好き…大好きなんだよって




この腕に包んで


いつまでも離したくないんだって







微笑む彼に



愛を



囁くんだ…











See you again



2015_02
06
(Fri)00:00

止まない雨の癒し -再会-

To yunho

I hope your day is special






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2015_02
18
(Wed)00:00

止まない雨の癒し -旅立ち-

Wishing you a great year.






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