2014_12
12
(Fri)14:41

バス episode 1





初めは後ろ姿を

見ているだけで良かった

そのうち横顔を

ちらっと盗み見るようになった


貴方の姿を確認するだけで

仕事の疲れが癒されるような気がしてた

あの頃





…パサッ


あの人のポケットからパスケースが落ちた

いつも見ていた僕だから

気付いたのかもしれない


拾って声を掛けなければいけないのに

伸ばした手が

震える



「…あの…これ落としましたよ」

ようやく絞り出すように

掠れる声で話し掛ける



心臓が早鐘を打つ




振り向く貴方は僕を見つめて

「有難うございます」

と目を細めてふわりと笑ってみせた




あの日から貴方の隣が僕の指定席


いつも色々な事を話してくれる

優しい声が心地良くて

時が止まる事を願った




-すーっ、-すーっ…

僕の肩にもたれて寝息を立てる


貴方の頬に

そっと

キスを落とす





僕の秘密の恋


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2014_12
24
(Wed)09:13

バス episode 2







いつの頃からだろう…

誰かの視線を感じ始めたのは


しかしその視線が俺と交わる事は無く

なんとなく あいつだろうか?と感じるだけ



正直驚いた

女性から熱い視線を送られる事は多々ある

でも… あいつは男だ

顔もよく分からない



仕事でトラブルも無いし人間関係は慎重な方だ

恨み?…まさかな


最初こそ嫌悪感を感じていた視線だったがその内俺の悪戯心に火が付いた

顔が見てみたい


わざと

そう、悪戯心が覗かせたその行為が

俺を堕とし入れた




「…あの…これ落としましたよ」


その声に振り向いた俺は

一瞬にして目を奪われた



…まいったな


大きな二つの瞳は微かに潤み

俺を吸い込むように見つめていた




あなたが好きなんです


その瞳はそう俺に訴えていた





その日を境に俺は

彼に

声を掛けるようになった


バスの一番後ろの席が俺達の指定席



彼の肩に頭を預けて

心地よい眠りに落ちる


夢の中で

頬にそっと触れる柔らかい感触



その熱が離れるのが惜しく


そっと目を開け


見つめる大きな瞳を引き寄せて

その唇に

キスを落とした




俺達の秘密の恋



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2014_12
24
(Wed)23:08

バス episode 3




あのキスの意味を聞けないまま

いつもの時間を

このバスで過ごす



いつも隣に居る筈の貴方は

今日は居ない



その代わり

僕が降りるバス停よりも2つ前で

バスを降りた



貴方に教えられた住所

マンションの番号



何度か呼び出しても応答の無い

インターフォン


ドアノブに手を掛けると

ガチャリと開く玄関


その先に見えるのはポツポツと

明かりの灯ったキャンドルの道


そして玄関先で迎えてくれる

雪だるまのぬいぐるみ


…Merry Christmas




キャンドルの道の奥に続く扉


『カチャッ』







真っ暗な部屋にほんのりと灯る


キャンドル達


それはハート型に形作られ…





その真ん中で微笑みながら


佇む 貴方


その手には真紅の薔薇の花束






「…好きなんだ


チャンミン…

俺と付き合ってくれないか?」





ただただ涙が溢れた


大きくて温かい掌に頬を包まれ


優しく抱き締める


貴方の肩越しに見た



初雪を



僕は



忘れない…








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2014_12
29
(Mon)00:27

バス episode 4




見上げる空は鉛色で

まるで俺の心を

映していた




時折頬に触れて

伝う涙と溶け合う雪が



心を凍らせた





「…チャンミン….なんで…おれを…」




空に手を伸ばして





もう触れる事の出来ない

その温もりが恋しかった






あの日




想いが通じたと思った


あの涙は


別れの


涙だったのか









何度も目の前を


停車しては


走り行く


あのバスを





俺は


ただ



見送るしか


出来なかった………………







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2014_12
29
(Mon)21:37

バス episode 5






見つかった腫瘍ですが、癒着が酷いので手術をして成功する確率が…

突然の告知

余命宣告はまるで他人事のように

思えて耳に入らなかった





その日から色を失ったように

無機質な日常が過ぎ




普通に生活をして

普通に仕事をして

普通に結婚をして

普通の家庭を持つ


その"普通"の事が意味を持たない

虚しさが僕を包んでいた





乗り慣れたいつものバス


「ここは優先席です、体の不自由な方やお年寄りに譲ってあげて下さいね」


その声の持ち主は

その席に座る学生に穏やかながらも

席を譲るように促していた



僕にも障害を抱えている身内がいたので


その席の大切さとそれを注意する勇気に

心が温かくなるのを感じた


そしてその人の

凛とした佇まいに


心を惹かれた





あの無機質な日々に

色が戻るようなそんな出会いだった





だから想いが通じたあの日


貴方の心に


永遠に残りたいと


降り積もる雪に


祈りを込めた


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2014_12
29
(Mon)22:17

バス episode 6




今日も


あのバスで


貴方を探す





今日は


私の"大切な人"を


失った日


もしかしたら…









一番後ろの席で


静かに目を閉じる貴方






そっと隣に腰を下ろして


「ユノさん….ですよね?」


問い掛ける私の声に


驚くように目を開く





私を見つめる


その瞳が微かに揺らいで





「….チャン….ミン?」



私の"大切な人"の名を呼んだ








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2014_12
30
(Tue)13:31

バス episode 7




突然、名前を呼ばれてハッと顔をあげると

見知らぬ女性が

俺を見つめていた




いや

初めてでは無い…



何処か懐かしいような

片目を細めて

小さく笑う


その仕草




そして俺を見つめる


見覚えのある



その瞳






思わず




愛おしい人の


名前が口をついて出た






彼女はその柔らかな笑顔を


くしゃくしゃにして





…兄を今でも愛しているんですね…

呟くように


一筋の涙を流した





彼女のその哀しそうな瞳の奥に



チャンミンが


見えた


気がした






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2014_12
31
(Wed)15:35

バス episode 8




R-18

※閲覧は自己責任でお願いします
















「…んっっ…ぁん………やっ、、」

「…ッッんん…止めるか?」



優しい問い掛けに大きくかぶりを振って

「もっと…もっと……」



ユノさんが欲しい…



何度、肌を重ねても

何度、欲を吐き出しても


温もりが離れる瞬間に

込み上げる切なさ


もっと…もっと…



この体を貴方で一杯に


貴方と愛した証を



永遠に刻めたら

僕は

満たされるのだろうか…




------------------------------------------------------






襟元から覗く白い肌にッッと舌を這わせると

ピクッと体を震わせ俺の肩にしな垂れる



服の上からでも分かる程に存在を主張するモノを

下からやんわり撫で上げる

耳元で甘い吐息が俺の鼓膜を刺激する



手早くベルトを外し下着の中に手を滑り込ませると

既に先走りの蜜で濡れたソレが俺をそそった



指先で先端をくちっと割り込み

ビクビクっとする反応を確かめ

掌で握り締めゆっくりと上下に扱いた



しきりに漏れる吐息を塞ぐように唇を重ね

僅かに開いた隙間に舌を差し入れる


逃げ惑う舌を絡め取り

時折キツく吸い上げた




混ざり合う唾液の音と

掌で擦り上げる度にぐちゅぐちゅと

立てる卑猥な音が


俺を酷く興奮させた




限界が近い俺自身に

チャンミンの手をあてがい

自分の握り締めているモノと一緒に擦り上げ

同時に理性を手離した


優しくなんてしてやれない….








「………、っんあ…はぁ…あっん、ん…ユノっ」

俺に跨り恍惚の表情を浮かべ

細い腰付きをしなやかに揺らして喘ぐ姿が

堪らなくいやらしい



下から突き上げる度に

流れ出る蜜と

俺の放った精が混じり合う水音が

静まり返る部屋に熱を帯びさせた




何度その中に欲を吐き出しても

チャンミンは俺を求めた

…ユノ…もうぐちゃぐちゃにして…僕を…壊して…




下から見上げたその瞳は

薄っすらと涙を滲ませ目の端を赤くしていた




どうしてそんな哀しそうな瞳で俺を求める…


不安に駆られる思いを払拭するように

思いっきり突き上げた



しなやかに揺れていた体は

ビクッと跳ね上がり

支えていた細い腰はガクガクと震え

仰け反るように

そのまま意識を失ってしまった










白い肌に無数に散らばる赤い花弁をそっと撫で

汗で張り付いた前髪を指で梳く




「….ユ…ノ…」

夢の中でも俺を求めているのか

伏せられた目尻からスッと涙が流れた




この愛おしい人を安らな眠りに導きたいと

その震える体を抱き寄せ


シーツに溶け込むように

眠りについた



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2015_01
01
(Thu)13:45

バス episode 9





何度抱いても抱き足りない位に

チャンミンが恋しい



そしてチャンミンも

同じようにとても積極的に俺を誘う



一度の行為で終わった試しが無い

最後には必ず意識を飛ばして

泣きながら眠る

愛おしい人



このままでは壊れてしまう…




そんな思いを抱きながらも

手離す事は到底無理だと分かっていた





まさかチャンミンが俺の元から




去る日が来るなど




考えもしなかった





---------------------------------------------------





…分かっている


自分が求めれば求める程


ユノさんの心の中に僕の存在が大きくなる事を





…分かってはいるんだ


けれど一目、その姿を見れば


触れてしまいたい衝動…


囁かれる愛の言葉…


与えられる温もり…


吐き出される欲望…



思い出される記憶に


僕の心と身体が彼を求めて止まない



たがが外れたように

"ぐちゃぐちゃにして"

"もっと欲しい"

"僕を壊して"


愛欲が僕を支配する








絶頂を迎えた僕に


そっと語りかけるように



「一生….お前を愛するから…」



遠くなる意識の片隅で


聞こえた優しい声に





貴方の元を去る事を


決めた









さようなら



僕の愛したユノさん







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2015_01
02
(Fri)00:00

バス episode 10




「あの…兄を恨んでませんか?」



私の問い掛けに少し考えるように

ふっと視線を落とし


それから小さくかぶりを振りながら


「今はもう恨んでません…」


顔を上げて私の瞳を見据えると


「俺が辛かったようにチャンミンも辛く苦しんだ筈ですから…」


そう言って見つめる瞳は哀しく揺れていた











兄が亡くなった後

大切な人を失った虚無感を埋めるように

兄の住んでいた部屋に越した




そして…ある日


本棚の奥に隠す様にして置かれてある

日記を見つけた



兄は几帳面な性格だし

私は見る事が出来なかったので

恐らくずっと昔から書いていたと思う




でも見つけたその一冊は

真新しい物で


中を開く事に躊躇する気持ちもあったけれど

それよりも兄の思いを知りたかった




日記の最初の日付は

余命宣告を受けて数日後から始まり


…生きる事に意味を失った…


その想いが日々綴られ

読み進めるのが苦しい程に

兄の心の痛みが伝わって来た





"貴方"

との出会い迄は…



貴方は"ユノさん"に変わり

兄の心はいつしかユノさんで溢れていた



彼を愛しているが故に

傷付けてしまう

ずっと兄の心は葛藤していた







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