2014_12
10
(Wed)12:54

純真 episode 1




~ ジー… ジー… ~

絵の具を塗りたくったような真っ青な空

眩しい程に照り付ける太陽

暑さを更に感じさせる蝉の声…



大学2年の夏休み、僕は念願叶ってようやくバイクの大型免許を取得した。
街の喧騒から離れ大好きな海まで風を切ってバイクを走らせたい。
それが僕の夢だった。

「あとはバイクか…」

前から欲しい物は決まっていた。
でもそれは親の脛をかじって大学に行かせてもらっている僕には到底手が出せる代物では無かった。

なるべく短期で稼ぎのいいバイト。

その条件を満たす所は無いかと日々、求人誌を片手に残りの夏休みを過ごしていたそんなある日。

「お前が探していた条件にピッタリな所があるみたいだけど、どうする?今日、面接したいらしいって。」

突然、親友のキュヒョンからの電話。
僕は心が躍った。

「勿論!すぐ面接を受けに行くよ!」

それから数時間後、待ち合わせの場所でキュヒョンと合流をした。

彼が言うには中学時代の友人がバイトしている所で求人が出たと聞いたらしい。
面接ではいくつかの条件にクリアすれば高収入が見込めるとの事だ。

…条件か。何だろうな。

彼の案内で暫く歩くと街のネオン街に辿り着いた。
学生の僕等には少し不釣り合いな場所のような気がして不安な思いを抱きながら目的地を急いだ。

「あっ!キュヒョン!こっちこっち!!」

急に大きな声に呼び止められ振り向くと、背の高い男性が元気良く手を振って僕等を呼んでいる。

「ミノ~久しぶり!
えっ?それ制服?すげー似合ってるなぁ、見違えるよ」

そう言ってキュヒョンは友人との再会にはしゃいでいた。

「あの…」

「あっ悪い!
ミノ、こいつがさっき電話で話したバイト候補のチャンミン」

と僕の肩をガシッと掴んでミノと呼ばれるその人に紹介をしてくれた。

「あの…シム・チャンミンです。
宜しくお願いします。」

ぺこりと頭を下げて挨拶をすると

「…………綺麗だね」

「え?」

「ご、ごめん。男の人にそんな言葉は失礼だったね。」

と慌てて恥ずかしそうに頭を掻いた。

「いや、ミノは間違っていない。
こいつはすげー綺麗だと思う。親友の俺でさえたまにドキッとさせられるもん。」

ずいっと横からキュヒョンが割って入ってくる。

「でも見た目と違って中身は男らしい面もあるんだぜ。ってか男だしね。」

と変なフォローをするから3人で顔を見合わせて笑った。

「ところでまだバイトの内容を聞いてないんだけど…」

「そう言えば…話してないのにこんな所まで連れて来ちゃったな。」

キュヒョンは罰の悪そうな顔をしてミノ君を見る。

「まぁ、ここで説明するよりも行けば分かるからさ。付いてきてよ。
僕も仕事抜け出して来てるからもう戻らないと。」

その声に頷き、黙って彼の後を付いて行く事にした。

数分歩いた先にあるひっそりと佇むビル。ミノ君の持っているカードキーをエレベーターに挿すと自動で目的の階まで上昇するようだ。

エレベーターが止まり目的の階を知らせた。

次に扉が開いた瞬間、目の前に僕の知らない世界が広がっていた…





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2014_12
10
(Wed)15:41

純真 episode 2



耳に心地よいジャズ。

少し暗めの照明とほのかに揺れるランプの灯り。

ゆったりとした重厚なソファが座る人々を包むように各所に置かれている。

そのソファに座る男女の姿。

ここは…

「会員制のホストクラブだよ」

僕の疑問を晴らすようににっこりとミノ君が告げた。

「あっおいミノ!何処に行ってたんだよ。」

ミノ君と同じ…白と黒を基調に整えられたシンプルなウェイター姿の男性が声を掛けて来た。

「すみません、カンタ先輩。用事が終わったらすぐに戻りますから…ところでマネージャーは今どちらに?」

「えっ、あぁマネージャーなら奥の事務室に居る筈だけど。」

「分かりました、有難うございます。」

ミノ君に続いて僕もその先輩にお辞儀をして奥の部屋へと進んだ。

~コンコン

「マネージャー、ミノです。
失礼しても宜しいでしょうか?」

「あぁ、どうぞ。」

部屋のドアを開けるとそこには物腰の柔らかそうな男性がデスクの書類を整理している姿があった。

「マネージャー、例のバイト候補生です。」

マネージャーと言われるその男性が僕の足元から頭までゆっくりと見上げると

「ミノ、ご案内有難う。さぁフロアに戻っていいよ。
ん?その後ろに居るのは?」

部屋の入り口からそっと中を覗くように見ていたキュヒョンの事だろう。

「彼を紹介してくれた僕の友人です。」

「そうか。それなら面接が終わるまでカウンターで好きな物を頼んでくれるといい。
ミノ、ご案内して。」

とにっこりとキュヒョンに伝えた。
キュヒョンは小さくガッツポーズをしていた。

…あぁ僕は一体何の面接を受けるのだろう


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2014_12
11
(Thu)09:29

純真 episode 3



「失礼しました。」

パタンとドアを閉めて2人は居なくなった。

マネージャーと呼ばれる男性と2人きり…気まずい。

その様子に気付いたのか彼はにこりと微笑みながら

「初めまして、オーナーからこの店を一任されているフロアマネージャーのコン・ユです。
もしかして緊張している?
ふふ、肩の力を抜いて少し話そうか。」

と僕を3人掛けのソファに促した。

「君、大学生?名前は?」

「あ、えっはい、初めましてシム・チャンミンと申します。大学の2年生です。」

「身長…高いね。」

「はい、186センチです。」

「中敷使ってるの?」

「…いえ、使ってませんけど…」

…何だろうこの質問の意図がよく分からな いや

それでも尚、にこにこと笑いながら

「彼女は居たりするのかな?」

「…いえ、今は居ません。」

大学に入学してすぐにサークルで知り合った可愛らしい女の子と付き合ってみた。
しかしその彼女とは春先に別れた…振られたんだ。
…チャンミン君は優しくて良い人だけど私には興味が無いみたいね…

それなりに楽しんで付き合っていたつもりだったから正直ショックだった。
女性の気持ちは雲みたいに掴めないものなんだと自分を慰めた。

「あの…先程から質問されている事は面接に重要な事なんですか?
実は….まだ仕事の内容も聞いてないんです。まさか…」

ホスト…とか言わないよね?

「あはははっ。ごめんごめん。
そっかぁ、まだ仕事の内容も知らなかったんだね。
さっきの質問は一応面接の内容なんだけどいきなり変な事を聞くおじさんだな~って思ったよね。
ごめんね。」

…うーんこの人憎めない。少年ような笑顔を向けられるから何も言い返せないじゃないか。

「仕事はね、フロアスタッフをお願いしたいんだ。さっき会ったミノもそうだよ。」

「…フロアスタッフですか?僕で大丈夫でしょうか…」

するとまたにっこりと

「君は一発OK!
ホストに見劣りしない容姿に今はフリーだしね。
君さえ良ければ明日から入ってもらいたいと思ってるよ。どうかな?」

少し僕は考えて俯くと

「ここはね他のお店よりもお給料が良くて働きやすい環境って噂でね、結構募集が来るんだよ。」

と言われ、思わず

「明日から宜しくお願いします!」

と頭を下げてしまった。

…少々不安だけどやっぱりお金の誘惑には勝てないよね。
憧れのバイクの為だものやるしか無いよね…



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2014_12
11
(Thu)15:16

純真 episode 4

あの後、マネージャーから一通りの説明を受けて分かった事と言えば。

オーナーの意向でホストの各人の個性を活かす為にホスト同士のチームプレイは行わないそうだ。

その代わりを担うのがフロアスタッフらしい。
しかし決してホストのようなサービスをする訳でも無く、ほんの少しお手伝いをすればいいと。

だからホスト達よりも個性を出さず、しかし容姿は良く、それでいて温和な雰囲気が求められるとかなんとか。

まぁミノ君やカンタ先輩を見れば納得する条件か。

けれど彼女が居るかの質問の意味の答えは出なかった。

僕で勤まるのかな…

とトボトボ歩いてフロアに出ると上機嫌なキュヒョンがバーカウンターで手招きして呼んでいる。

「浮かない顔してどうしたんだよ?
面接ダメだったのか?ん?」

僕は首を横に振って

「いや、一発OKだって。
明日から出勤だからここで見学してっていいって。
あっ、お酒も好きなのを頼んでいいよって。」

「おーっさすが俺の推薦した人!
あっもう遠慮無く頂いてるよ。
ここのワイン美味いのが揃ってるって言うからさ~」

はぁ、このお気楽な友人が羨ましいと言う眼つきで見上げながら

「ワインお願いします」

とやけ酒を決めた。

「なぁなぁ、さっきからこのフロアを観察してたんだけど、結構面白いんだよ。」

「何が?」

「ホストがさ、個性バラバラですげーの。
ほらっ、手前のソファのホスト。何処かの貴公子みたいだし、その奥は有名デパートの紙袋ですか?って感じのジャケットスーツだし。
あっ、あそこは宴会部長みたいなホスト!馬っぽい~」

と少し酔いが入ったキュヒョンがくくくっと楽しそうに辺りを見回す。

貴公子と呼ばれた彼は緩くパーマのかかった金髪に可愛いらしいくりくりの瞳。
シフォンシャツがまた可愛いらしさを引き立てている。

有名店の紙袋と言われてしまった彼だって、その個性のある服を着こなして凄くお洒落だ。
身長はそんなに高くは無いがシャープな顔立ちが目を惹きつける。

宴会部長だって凄く端正な顔だし、着ているスーツは恐らくブランド物だろう。
いいとこのお坊ちゃんだったりして。

マネージャーの言う個性とはこの事なのか…
面白いかも。

「あっ、チャンミン!
見てみろよ、あの一番奥のソファ。
綺麗な人が綺麗な女性と居る。綺麗だな~」

と訳の分からな事を言われてその先を見ると

眼を見張る程の美しさを放つ男性の姿が視界に入った。

「あの人はヒチョルさん。
女性よりも美しくてとろけるように甘い言葉で人を魅了するこの店のNo.2だよ。」

と後ろからミノ君が声を掛けて来た。

「えーっあんなに綺麗な人がNo.2なわけ⁈」

納得がいかないといった様子のキュヒョンが叫んだ。

「じゃあNo.1は一体…」

と2人で言いかけたその時

ふわっと鼻孔を抜ける爽やかな香りが僕達の側を通り過ぎて行く。

ゆっくりとその香りを追うと綺麗なアーモンドアイと目が合った…
思わず引き込まれそうな瞳を逸らす事が出来ない。

あぁこの人がNo.1なんだ…と全身を纏うオーラがそれを感じさせた。






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2014_12
24
(Wed)12:00

純真 episode 5



翌日、昨日の出来事をぼんやりと思い返しながらまたあのビルへと向かう。

…ひと目、見た人を惹き付ける不思議な魅力。
そして何処となく憂いのある後ろ姿。

思い出す度に胸がざわつく。

「…………チャンミン…」

はぁ。

「おーい!チャンミン!!」

「わっ!!!!びっくりした」

耳元で呼ばれた声に驚いて振り向くと苦笑いしているミノ君の姿があった。

「あは、ごめん。呼んでるのに気付かないからさ。何?悩み事?」

「あっ、いや、そんなんじゃないけど。
…仕事の事とか大丈夫かなって。」


…本当、いくら給料がいいからってホストクラブなんて僕には場違いじゃないだろうか。

そんな心配を他所にミノ君はまたあの笑顔で

「チャンミンなら大丈夫だって!
だってその容姿、絶対にあの人のタイプだもん。」

ふふふ~♪
と意味の分からない事を残して足取りの重い僕を引き摺るようにお店に連れて行った。

----------------------------------------------


ミノ君の説明ではこの会員制のホストクラブへ出入り出来るのは極一部の選ばれた女性達のみ。

主にキャリウーマンとしてトップに立つ女性をオーナーが選んでいるとの事。

お店に来るにはこのビルに入るカードキーが必要で、どうやらこれがとてつもなく高い会員費じゃないかとミノ君は考えているらしい。

とい言うのもお店ではお酒やフルーツをそれ程頼む事もなく毎日のようにお目当のホストに会いに来る女性が多いそうだ。

ただ日々の愚痴を話して帰る、まるで『彼氏』に会いに来るかのように。

女性達を迎え入れるホストに個性を求めてるのはそれぞれに合った『彼氏』を探してもらう為…なのかもしれない。



「チャンミン、昨日会ったと思うけどこちら僕等と同じフロアスタッフのカンタ先輩。」

「チャンミン君、宜しくな。
何か分からない事があったらいつでも聞いてくれていいから。
フロアスタッフはそれぞれに担当を持つけどお互いに協力してるからさ。」

ん?担当?何だよそれ。

???の残る僕の顔を察してミノ君が

「その説明はこれから!
僕達フロアスタッフはチャンミンを含めて5人なんだけど、それぞれに受け持ちホストが決まってるんだ。
僕はね…」

と言うと昨日のシフォンブラウスの似合う彼と有名店の紙袋と言われた彼を指差し

「まだ未成年のテミンとキレ者のキーさん」

と教えてくれた。

その声に反応したのか少し離れた所に居たテミンがミノ君の腕に絡まるようにしがみ付き

「ミノヒョン♡
新しく来たスタッフさん?
わぁ~綺麗な人!絶対に…ヒョンの好みだよねぇ。
あー良かった。これでヒョンのご機嫌も直るかな。」

んんんん?ヒョンの好み?
僕がミノ君の好みって事???

思わず一歩後退りしてしまった…

その時

「おっと」

後ろを通る人とぶつかってしまった。



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2014_12
24
(Wed)13:48

純真 episode 6




「お前ら…何ボサッと突っ立て話してんだよ。早く開店準備しろよ。
ったくお前もぶつかってくんなよな。」

僕がぶつかった相手が後ろから苛立つ声で僕の肩を掴んで振り向かせた。

目の前にはあの綺麗な人。
確かNo.2のヒチョルさん…

「うっ…っ」

近い!顔が近い!!!
どんどん近付いてくる綺麗な顔。

あまりの近さに背けようと目線を外そうとした最中

ガシッと僕の頬を両手で挟んで逃がさないヒチョルさん。

その目は僕を見据えたまま

「なぁ、ミノ。
このバンビちゃん、もしかして俺の担当?」

「はい♪そうでーす。」

何だか嬉しそうなミノ君の声。

「そうか…じゃあ、挨拶しないとな。」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべると見つめていた瞳は妖艶な眼差しに変わり、ちろっと下唇を舐め

「バンビちゃん宜しく…」

と更に顔を近付けて来た。


キスされる…

と思わず目を瞑った瞬間


グイッと後ろから力強い腕に顔を押さえ込まれた。

…あっあの香り…

「っ…ユノ!!何邪魔してんだよ!」

「ヒョン、あんまりがっつかない方がいいですよ。
仔鹿が狼に食われるみたいに怯えてます。」

突然の事で足が震えているのに耳元で囁く低い声と吐息に背中がゾクリとした。

「はぁ。取って食わねーし。
ちょっと冗談だっつーの、お前には通用しないか。ったくよ。」

チッと舌打ちをしながらそう言い残すとヒチョルさんは去って行った。

ふわっと解き離れた腕に慌てて僕は

「あっありがとうございます!!!」

と頭を下げて精一杯の御礼をした。


「気にしなくていい。」

ぽんぽんと僕の頭を叩きながらその人はフロアに消えて行った。

あの残り香が僕の体を包んでいて少し身体が熱くなるのを感じた。





側で様子を伺って居たミノ君とテミンが興奮気味に僕に近寄って来て。

「いきなり凄かったね!
いや~絶対にヒチョルヒョンのタイプだとは思ってたけどまさかね♡
キスとか…」

「ミノヒョン!やっぱりあれは冗談じゃなくて獲物を捕らえた目だったよね~
きゃー♡」

と僕を置いて2人で盛り上がっている。

「ちょっと2人共、僕にちゃんと説明してくれないかな…」

少し落ち込んでいる僕に気付いた2人がやっと心配をしてくれて

「ごめんね、チャンミンの気持ちを差し置いて盛り上がっちゃった。
実は…ヒチョルヒョンはこのお店のNo.1をずっと守って来てたんだ。
でもここ1年はユノヒョンの指名が多くて。
ヒョンが他の店から声が掛かっているんじゃないかって噂もあってさ。
でも長い付き合いのお客様も多くてお店としてはヒョンを手放したくないんだよね。」

「それが僕とどう関係があるの…?」

「ん~それはねぇ、、
ヒョンは綺麗な人が好きなんだ。
だから担当スタッフがチャンミンならお店に残ってくれるかなとマネージャーが考えたわけ。」

「…それって変じゃないの?
僕みたいな男に引き留める力があるの?」

「あっ、ヒョンはバイだから大丈夫♪」

えぇっ~?!何だよそれぇ~!!

それって、それって…僕にヒチョルヒョンの相手をしろって事なのかぁ?!

はあぁぁぁぁ。
思いっきり溜息を吐いてる僕を他所に今度はテミンが

「でもヒチョルヒョンよりもびっくりしたのが…ユノヒョン!」

「だよな!!あのユノヒョンがチャンミンを庇うなんて有り得ない。
びっくりして声が出なかったもんな。」

その言葉の意味を知りたくて

「何で?助けてくれたのは可笑しな事?」

と聞くと、2人は顔を見合わせて

「「有り得ない!」」

と声を揃えられてしまった。



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2015_01
08
(Thu)10:15

純真 episode 7

開店準備に追われ簡単な自己紹介を済ませた僕は先程の二人の言葉を思い出していた。

ユノヒョンは僕等と極力関わらないようにしてる気がするんだ。
親しくならないように壁を作っているような感じがしてさ….
ちょっと冷たい印象なんだよね。



じゃあ何で僕なんかを庇ったりしたのかな…
そんなに冷たいような人に思えてならないのに。

そんな疑問が頭をぐるぐると駆け巡っていた。



「チャンミン!早速、ヒチョルヒョンがお呼びだよ♪」

ミノ君の声で我に帰ると、ヒチョルさんがにっこりと美しい笑顔浮かべてソファから手招きしている。

「大丈夫、心配無いって。
ヒョンの隣でニコニコしていればいいと思うから早く行って来なよ~。」

ミノ君に押されておずおずとテーブル席まで移動した。

「は、初めましてシム・チャンミンです。」

「やだ♡可愛い~
まだ若いのねぇ。お肌もツヤツヤじゃない~
私も負けないように頑張らなくちゃ!宜しくねチャンミン君。」

ヒチョルさんの隣で僕を意識しながら笑顔を向ける素敵な女性。

負けない?って何の事?

そう思った瞬間、ヒチョルさんの綺麗な手が僕の頬を撫で下ろし

「このバンビちゃんと君が俺を取り合ってくれるなんて幸せだな」

とにっこりと僕を熱い視線で見つめる。

いやいや!それって!!
わっ…やっぱり…女性の目には物凄い敵対心が…





「おかえり~チャンミン♪って、あれ?何だか凄く疲れてるね…」

「ミノ君、、、、ヒチョルさんって公私混同タイプ?!」

「あ~、う~ん、、、、そうかもねぇ。」

はぁぁぁやっぱりか…そう言うの正直面倒臭い。
いくらお金の為とは言えこんな事に巻き込まれるなら辞め….いやいや、こんな割りのいいのは他に無い訳だし!でもなぁ…

ブツブツ愚痴愚痴していた僕を心配して

「ヒチョルヒョンはさ、一見軽く見えるけど思慮深くてどうしたらお店を盛り上げられるか、お客様を大切に出来るかちゃんと考えていると思うんだ。
だからそれを側でサポートしてあげて欲しい。」

初めて見るミノ君の真剣な顔
本当にヒチョルさんを慕っているのが分かる…

そう言えばミノ君は高校を卒業してからこのお店で働いてるって言ってたからヒチョルさんの事をよく見ている訳だし。
そんな彼がそう言うなら僕もちゃんとヒチョルさんと向き合わなければ。

そう、決意をした。






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2015_01
08
(Thu)13:30

純真 episode 8

決意したのはいいけれど、あれからヒチョルさんのアタックは凄くて!!
でも僕はあまり男同士のスキンシップは苦手な方だから、やたらとスキンシップしてくるヒチョルさんを交わすのが僕の日課になってしまった…




「俺のバンビちゃん♪♪今日も綺麗だよ。」

「ちょっ、いい加減そのバンビちゃんって止めてくれませんか?!それとこのお尻を撫でる手!」

「い・や・だ♡それにこのお尻がプリッとしてるのが悪い、ついつい触りたくなるんだよ♪」

「なっっっ!何を馬鹿な事を言ってんですか?!」

あまりの不毛な会話に呆れてその場を去ろうとしたら前から来た人に思いっきりぶつかってしまった。

「あたたたっ、す、すみません!」

慌てて頭を下げて、ふと見上げるとそこにはユノさんが居て…僕に伸びる手が見えた

「お前さ、もう少し前髪切れば?」

そう言って僕の前髪にそっと触れるユノさんの指

「えっ、あっ、そうですよね、だからぶつかっちゃうのかな…」

思わず変な事が口に出たと思ったけど触れられた指にドキドキして…

「折角…綺麗な瞳が隠れてしまってる。」

ふっと小さく笑って触れられていた指は離れた。

何だ?!今のは!
天使の微笑みのような…うっ、またドキドキして来た…

「うぉっほん!!」

後ろから聞こえた咳払いに体がビクッとして振り向くととっても不機嫌そうな顔のヒチョルさん。

「…ふーん。へぇー、なるほどね。」

それだけ言うと僕達の間に割り込んでその場を去ってしまった。

ユノさんも何事も無かったようにフロアに戻ってしまい、残された僕は前髪を掴んで鏡に映る自分を見た。

「綺麗…かな…?」

止まない胸の鼓動と訳が分からず赤くなっている耳に戸惑いを隠せないでいたんだ。




その日は僕をヒチョルさんは一度も呼ばなかった。
その事が少し気になっていたんだけど、それよりももっと驚く事があって…
初めてユノさんが僕を席に呼んだんだ。





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2015_01
12
(Mon)22:10

純真 episode 9

「ユノヒョンがチャンミンを呼ぶなんて珍しいね。」

以前、僕がヒチョルさんとユノさんの担当だとミノ君から告げられた時、"ユノヒョンは滅多にサポートを頼まないから"って言ってたのを思い出した。

「まっ、ユノヒョンの接客を間近で見れるのはちょっと羨ましいかも♪」

と言うミノ君に送り出されてテーブル席に向かった。





お客様とユノさんを前にしておずおずと挨拶をすると

「ごめんなさいね、チャンミンさん。」

といきなりその女性は僕に申し訳なさそうに微笑みを向けた。

「でも…今日は私の特別な日なのよ。ねっ、付き合ってくれるかしら?」

と1本のワインを差し出して来た。

1975年…そのラベルをそっと指でなぞり

「私の誕生日なの。毎年誰と祝う事なく過ごして来たけど今年はここで…ユノの側で過ごしたかったの。」

そう言うとちらりと隣に座るユノさんに目配せをした。

「でもユノはあまりアルコールが飲めないでしょ、でも一人で飲むには勿体無いワインなのよ。ね、だから一緒に飲みましょう。チャンミンさん。」

何だか昔からユノさんを知っているような雰囲気の女性に促されるまま席についてそのまま乾杯をした。

「今日は素敵な誕生日になりそうだわ。」

と嬉しそうに笑う女性…そしてその様子を優しく見つめるユノさん…

何て優しい目を向けるんだろう。
恐らく男性の僕まであの眼差しに見つめられたらドキドキしてしまうかもしれない。
そんな優しさが滲み出ていた。


暫くして女性はアルコールが進んだのかポツリポツリと心の内を話し始めた。

「…なんで…伝わらないのかしら…こんなに会社の為、皆んなの為にやって来てるのに…」

恐らくこの女性は会社のトップとして社員を引っ張っている立場にあるらしく、色々な物を背負っている旨を吐き出した。

俯きながらも涙は必死に堪えている様子が普段の強さの裏に隠された儚げな彼女の一面だと感じた。

思わずその震える肩を抱き締めてしまいたくなる程に、彼女の心は弱かった。

…でもユノさんはそれでもその女性に触れる事は無く

「いつか….伝わる日が来る…分かる時が来るから…」

そう言ってあの眼差しを向けるだけだった。

ここで彼女の弱い部分につけ込まず、言葉で包み込む優しさがその女性をまた奮い立たせているような気がして、僕が口出しの出来ない雰囲気だと悟った。

これがユノさんの優しさなんだ…