イクメンウォーズ #28

すぅ…すぅ…と寝息の感覚が一定だし、深い眠りに堕ちたかな…
お風呂から上がったミヌ君が眠りに就くまで。
いつも園でみんなに読み聞かせをしている絵本をそらで読んであげた。
「このお話はママも寝る前に読んでくれるんだよ!」って、嬉しそうにその事を話すミヌ君を見て凄くホッとしたんだ。
だって、仕事と家事と育児に追われながらも、ミヌ君が一日の終わりを迎える時には必ずママが傍に居るって事を知ったから。
目を閉じて眠りに就くまで、大好きなママの顔をその目に映して眠るんだもの。
幸せな気持ちのまま、眠るんだろうね…
そんなミヌ君の傍で。
ママも一緒に寝ちゃうのかな…
母子の幸せなんて、僕が勝手に測ったものさしで決めちゃ駄目なんだ。
沢山我慢もするけれど、愛情を注がれているって。
それを子供が感じていればそれはそれで…
幸せな事、なんだね。
パタン…
「ミヌは寝たか」
「えぇ。お話の途中でね、寝ちゃいました」
リビングに戻るとソファーに深く腰掛けた園長、その片手には読みかけの本。
「本が好きなんですね…このお家に来た時に初めに片付けたのは本でしたもんね」
そう、部屋のあちこちに無造作に置かれた本達。
その時、その本の多さに驚いたんだった。
僕とミヌ君が来てからは園長が本を手にする事が無かったから忘れていたっけ。
そっか。園長も自分の時間が必要かな…
ソファーに一旦腰を掛けようと思って、進めていた足をキッチンに向き直し。
乾いた食器を片付けようとシンクの前に立ったら。
読みかけの本を閉じてこちらに向かおうとする園長がいて。
だから慌てて。
「あ、続き読んでて下さい…」
そう言ったのに。
「馬鹿、んなのお前が居たら読む気になんねぇよ」
「…それとも、お前が読んでくれんの?」
って…
本当、この人は…何でこんなにも僕の心を揺さぶるんだろう、、、
クシャって笑った顔がミヌ君にも負けない澄み切った少年の眼差しで。
あの頃ーーーー、僕が初めて抱いた淡い恋心のあのガキ大将の彼を思い出す。
あぁ…多分、こんな感じなんだ。
初恋を思い出しては、それとは別に今の恋にも嵌りゆく気持ち。
知れば知る程、惚れ直す。
園長が言った事が。
僕にも良く分かったんだ…
「…ふふ、読んでたら朝になっちゃいますよ。それよりも、……一緒に入りませんか…お風呂に」
火傷をしたから。
それは僕の為だから。
…ううん、そうじゃない。
今の素直な気持ちのままーーー
貴方に触れたいんです。

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